“ ルネッサンス・フェスティバル” in USA
2009年カジュ通信 秋冬号より
〜 たのしくって、ためになる、その上経済効果大!〜
アメリカの “ルネッサンス・フェスティバル”は、20年以上に渡って、安定した成功と人気を得ているお祭りです。
そこはいつでも摩訶不思議な中世ヨーロッパのファンタジー・ワールド! スタッフやお客さんはみな中世の衣装をまとい、古い紋章の入った色とりどりの旗がひらめき、やり試合に臨む騎士は馬に乗り、鷹が舞い、中世の古楽器の音楽や美味しい料理のにおいが漂っています。
色とりどりのテントや小屋には、手作りのクラフトがいっぱい。威勢のいい呼び込みのかけ声があちこちで響きます。
お祭りの目的は、もちろん「楽しむこと」なのですが、アメリカ各地で行われるこの“ルネッサンス・フェスティバル”は子どもたちに生きた歴史や美術・工芸を学べる場、また大勢が共同で何かを作り上げる機会、伝統工芸を保護する場、多くのアーティストや職人たちに収入を得る機会などを提供する、という意味でも大きな成功をおさめています。
存続が危ぶまれたこともあるのですが、この長きにわたって続いてきたのには多くの理由があります。特に大きな理由と思われるのは、人々が失業などの実生活の問題から逃れられる大切な夢の場所になっているということです。
そこは、機械化以前の世界、名誉や礼節や友情が大切にされる場所、 それでいて、ぶっきらぼう、無愛想、ふざけた振る舞いにも寛容な場所・・・アメリカの実社会の価値観とは大きく異なる場所なのです。
例えば、ディアフィールド海岸で行われていた「フロリダ・ルネッサンス・フェスティバル」は、来春18回目を迎え、この不景気にも関わらず、毎年5週間行われるこのフェスティバルを、来年はさらに1週間延長し、規模を拡大して2度目のマイアミ開催を予定しています。
予想では約10万人の観客がこのお祭りに酔いしれるということです。
期間中販売されるモノのほとんどは手作りです。これは、普段ほとんどのモノが工業製品で、値段が問屋によって決められるアメリカでは珍しいことです。
政府によってアートが崩壊し、一部の売れっ子をのぞいて、プロのアートテイストが生計を立てるチャンスが奪われているこの国で、このフェスティバルは、アーティストや職人たちの大変重要な市場になっています。
全国(の同フェスティバル)を旅することで、売り手はより多くの人々に作品を見せることができ、それによって、地元に店を持つことができるようになります。フェスティバルでは、その独特の雰囲気に助けられて「ここでしか買えない一点もの」としてその作品が売れていきます。
伝統的な手作りバスケット、手紡ぎ、手織り、手縫い、陶芸、吹きガラス、鉄工芸、木工などのほか、鷹狩りや「カリリオン」といわれるフランスの組み鐘(重さ4トン!)の楽器の演奏といったエキゾティックなショーも披露され、キャンドル作り、フェンシングやメイ・ポールダンスなどの実演もあります。
観客の一部は単に訪れるというのではなく、毎年「生きた歴史」を再現するグルーブの一員として参加します。彼らはもちろん衣装は自前で用意し、古武術や中世の料理、また薬草について研究してきます。(ヨーロッパと違ってここでは薬草はお医者さんや薬局がほとんど扱いません!)
フェスティバルの運営にあたっては、常に演目や作品が “ルネッサンス”のテーマに合うものであるよう厳しく制限されますが、にも関わらず、参加アーティストたちはその能力をフルに発揮できているようです。例えば中世の音楽の演奏だけを許されているミュージシャンは、退屈するどころか、期間中、有り余るエネルギーで次々とパフォーマンスを繰り出します。
冬をのぞいて一年中、会場やその付近には専用のキャンプ場が設けられており、フェスティバルとともに独特のコミュニティを形成しています。そこはアーティストだけではなくアメリカ社会に居場所の見つからない人々にとってもある種の避難場所になっているようですし、アーティストの創作の場であり、よき語りの場、よき思索の場になっているようです。
※リンダ・クゥートゥナー
ドイツ出身。アート・マネージャー。今年、フロリダ・ルネッサンス・フェスティバルにスタッフとして参加した。
2005年 カジュのアーティストも参加した「トラーベ・アート・フェスティバル」 (ドイツ)では、現地の事務局スタッフを務めた。
12月まで日本に滞在している。 連絡先: メールをこちらに。(英語でお願いします)
※フロリダ・ルネッサンス・フェスティバル → 公式HP
コメント