カラリと綴れば 1
カジュ通信2010年春・初夏号 より
アメリカ東部、バージニア州。ワシントンDCの西側のメトロエリア。このあたりには 国内、国際線をあわせて3つ空港があるが、その中でも最大のダレス国際空港から車で20分のところに住んでいる。
どんなところかと一言で言うならば、鎌倉の道路幅をうーんと広げ片側3車線にし、 家と家、ビルとビルとの間も、広げて広げてカナダの森にあるような木を街路樹に植え、空を見上げれば大空が広がる、太陽が低く昇る、そんなところだ。まだ開発、開発・・・主に道路整備だが、工事があちこちで続く。(というのも、アメリカ人は信号で極力止まりたくないと思っている。そして時速90kで走行するフリーウェイ・・・有料ではなく、信号無しの高速道路の整備に暇がない)。
4月はこちらも桜の季節だった。このあたりの街路樹の桜は八重桜。ポトマック川のほとりのソメイヨシノは約百年前に日本が贈った。アメリカ人が自ら好んで植えるなら、可憐さより派手さを求めて八重桜を選ぶ。もこもこと桃色の花をつけて3週間ほどで散った。
初めの頃感じた生活のちょっとした不満は、慣れっこになった。すべて“デザイン不良”に由来すると思っている。音ばかり大きいだけの掃除機、水量の調節がきかない蛇口、水が溜まらないトイレのタンク、形が悪いため一度に流しきれない便器、強風の時はすきま風が入り込むドア、開閉のできない網戸、ひとつひとつ欠点をあげつらっていくと楽しいくらいだ。
でも、広いから許す。許せないのは、学校でもショッピングモールでもどこのトイレに必ずついているペーパータオルか。だれもハンカチでなんか拭かない。日本人がこちらに住んでどのくらいでハンカチを持つのをやめるだろうか?私はまだバックに必ず入れている。こちらに来て使うバックは1つと決め(忘れ物防止のため)、その中に入れっぱなしというのが正しい。ぜんぜんエコじゃない米国というのは話の種になりそうだ。いつかしてみたい。
さて、今日は金曜の夜。ナショナルジェオグラフィック・チャンネルでシーザー・ミランの犬番組が放映される日だ。米国でこれほど多くの飼い主が「飼い犬に手を噛まれている」とは知らなかった。困りものの問題犬を、魔法のように手なずけてしまうシーザーは、メキシコから一文無しで20年前に違法入国し、ハリウッドの有名人達が抱える犬の悩みを解決してあげたことから一躍有名になった。
彼は一言も英語が話せなかったが、夢だけは大きかった。最初はハリウッドで活躍する犬のトレーナーを目指していたが、やがて自分の本当の使命に気づき、今はドッグセラピーをしている。怯える犬、噛みつく犬、外に出たがらない犬。彼に言わせれば犬の問題は飼い主の態度にある、つまりは人間さまの勝手が犬を不幸にしている。だから、犬が犬らしく生活できるようリハビリさせ、飼い主の方もトレーニングする、というのが彼のやり方だ。そして、犬をまさに「猫かわいがり」しようとする飼い主に、時には「今はタッチしちゃだめ」と釘を刺す。今夜はどんな問題犬が登場するのだろう・・・。
私はついつい子育てと重ね合わせて見てしまう。
それでは、また次回までさようなら。
(流蛍 2009年8月から米国在住 メールはこちら)
コメント