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「紡ぎのギルド(組合)」 ニュージーランド生活(4)

カジュ通信2010年秋・冬号 より



「紡ぎのギルド(組合)」 ニュージーランド生活(4)

早いもので、これを書いている今はもう10月、みなさんがこれを読む頃は11月でしょうか。
日本では、金木犀が香っていると聞きました。あの香りはもちろん、オレンジの小さい花が落ちている様子もなつかしいです。あの粘土で作られたような、ぷっくりした花びらが好きです。

ここ、南半球のNZでは、10月は春と初夏の中間です。そして驚いたことに、桜をあちらこちらで見ることができます。庭先に植えられていることが多く、今のところお花見をしている人は見たことがありません。ソメイヨシノや山桜以外の、今まで日本では見たことのなかった種類の桜も多く見かけました(ただ 単に詳しくないからかもしれませんが)。



最近、念願だった紡ぎのギルドに通い始めました。NZには、「Creative Fibre(イギリス英語でFiber)」という名前の、「紡ぎ/染め/編み/織り/フエルト、またはflaxで作るのが好きな人たち」が集まる大きな組合があるのです(まるでカジュみたいですね(笑))。
意外に規模は大きく、HPによると3千人が参加しているそうです。さすがは羊が人より多い国だと思います。

私は、自分の家から近い、紡ぎと編み物のギルドに2週間に1回参加しています。だいたい、参加者はいつも10人前後で、年配の方が多いです。
小さい紡ぎ車を持ってきて紡いでいる人もいれば、編み物をしている人もいます。(ちなみに、紡ぎ車は、小さい「持ち運び用」と大きい「家用」を使い分けている人がほとんどでした。日本には紹介されていないと思われる、昔ながらの紡ぎ車を使っている人が多いです。いろいろな種類があります。)
私の大好きなスピンドルで紡ぐ人もいて、私がスピニングパーティーで購入した、日本から持ってきたスピンドルを見せたら大喜び、大人気で、「スピンドルのロールスロイス(!)」とまで言われました。確かに日本を離れると、日本の手仕事のすごさというものを強く感じます。
また、おうちで飼っているワンちゃん(サモエドという種類と言っていました。白くてむくむくした犬)の毛と羊毛を合わせて紡ぎ、セーターを編んで着ていたり、庭で取れた植物で染めた羊毛を持ってきたりという人もいます。

そして、おもしろいなと思うのは、このギルドでは言葉の壁を全く感じないということです。バイト先や日常の生活の中では、言葉が出てこなかったり、伝わらなかったりと、悔しい思いをすることもありますが、ここでは紡ぎ/編みだからなのか、それともそれが好きなことだからなのか、通じ合っているという感覚があります。不思議だし、とても嬉しいです。
もしかしたら、手仕事は言葉を超えるということでしょうか。そんな感じがひしひしとします。

文 : むかい りえ

2009年11月より2年の予定でニュージーランド、北島のウェリントンの在住。たなか牧子造形工房の仲間。義母さまから習い、欠かせないものになった糸紡ぎのことやNZの生活について書いているブログ「みはるかす」は必見。

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