夏の仕事
カジュ通信2011年夏号 より
気がつけば、今年も半分以上が過ぎて、暑い夏がやってきました。今年は“節電”という大きな課題を背負った夏ですが、掲げられるいろいろなアイディアは、何も今年に限って実践しなければならないことではないですね。そう、ちょっと前まではエアコンの代わりにあたり前に行われた暑さ対策は、これを期にずっと続けてゆきたいと思います。
日本の暮らしは、本来、“面倒くさがり”には務まらないものなのだということは、ここ15年をカジュで過ごしてみて身に染みて感じています。手間を惜しんでいては、快適でないし、時には、病気などを引き起こして命に関わることも。そうそう、昔の手紙の冒頭の挨拶に「つつがなくお過ごしでしょうか。」というのがありましたが、これはツツガムシという伝染病を媒介する虫のことで、東北の河川域などによく発生して人々を苦しめていたそうです。手入れを怠ると、そんな虫は大量発生する、カビははえる、モノは腐る、、、日本で特に夏に“スローライフ”を実践しようと思うと、毎日はスローどころの話ではありません。(笑)
でも昔の日本人はすごかった。そんな手間ヒマを、“楽しむ”余裕を持っていたように思います。カジュには、萩戸(はぎど=風が通るように作られた夏のふすま)が10枚以上残っていて、今はふすまを全部コレに変えているのですが、これが見た目にも、実用面でも、すこぶる具合が良いのです。葦簀(よしず=こんな難しい時だったんですね)、簀垂れ(すだれ)、うちわ、打ち水、そして風鈴。昔は見た人が涼しい気持ちになれるように女性は、着る浴衣や着物の色を吟味したと聞いたことがあります。自分じゃなくて人のため。カッコイイ。
震災に遭われた方々の記事をよく新聞でみますが、どの写真も笑顔、しかも底から輝くような笑顔なのには、ほんとうに心打たれます。どんなに苦しくても楽しみを見い出す力、まさに、伝統の気質。被災者の人にできるなら、私たちに取り戻せないはずはない!おう!
日本語の「働く」はもともと「はた=傍」「らく=楽」が語源だったそうです。身近な人を快適にしてあげる、そんな気持ちで、楽しい節電ができたらいいですね。一応、アーティストの端くれ、何か楽し〜い涼のアイディアを考えながら、夏、働きます。
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