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2013年6月

往復書簡(6)  磯辺朋子さんから島津健さん

少しお休みしていた「往復書簡 掘り起こし作業」を再開します。歌人の磯辺さんが、かまくららしさとは何?と手紙の中でといかけます。

【テーマ】 かまくら らしさ

未知なる往復書簡のお相手の方へ

日頃、何気なく使っている言葉。わかって使っているつもりでもいざ一言で説明しようとすると、意外と難しかったり、曖昧だったりしてしまうことってありませんか。

今回はこの言葉からは少し離れてしまうかもしれませんが、「鎌倉らしさ」について考えてみたいと思います。

“鎌倉らしい町づくり”など鎌倉らしいという言葉をよく耳にします。私自身、友人などから「鎌倉らしい所に連れて行って」「鎌倉らしいお店で食事がしたいのだけれどどこか教えて欲しい」などと頼まれます。果たして「鎌倉らしい」とは何をイメージし、何を指して皆さんおっしゃっているのでしょうか。

歴史的遺産が多くあり、前方を海に三方を山に囲まれたそんな土地柄を好んで、多くの文化人達が昔から移り住んだという自然豊かな鎌倉。生まれも育ちも鎌倉の私は、鎌倉以外に住んだことはありませんが、この小さな世界で充分に満足して日々を送っています。

そんな私にとっての「鎌倉らしさ」とは―――。

あまりにも日常化してしまい、いまひとつピンとした答えを出せないのですが、あえて言うならば光と影。光と影、陰と陽とを二つ同時に感じることのできる町、とでも申しましょうか。海の明るさを持ちながらそれとは背中合わせに、暗く折り重なった谷戸の懐深くにまで何本も入りくみながら延びている細い道。行き止まりなのか、永遠に続くのか、死に場所を捜し求めて彷徨っていた老猫がふっつりと姿をかき消してしまいそうな、そんな、異界との境目が曖昧な雰囲気のする場所が数多くあります。

爽やかな海風を頬に受けながら、どこか血生臭さを感じずにはいられない独特な匂い。

この光と影の入り混じった町にいると、じっと一人で内にこもっていたくなるような、はたまた乾いた笑い声を響かせながら町中に繰り出して行きたくなるような、そんなアンバランスな自分を感じてしまいます。

鎌倉在住の方が鎌倉らしさについて語る時、鎌倉への愛着や誇り、優越感のようなものが垣間見えて、少々、辟易する事があります。

しかしそんな私も、やはりこの言葉にこだわるということは、この町に対する一種の執着心が根底に流れているのでしょう。鎌倉は一度住んだら最後、呪縛のように人をひきつけやまない力が存在する町なのかもしれません。現に、結婚し新居を捜す時、鎌倉を離れることにただただ息苦しいほどの恐怖心を抱き、女の武器をフル活用して夫を説き伏せ、この陰湿な風の吹く土地へと引きずり込んだのですから。

さて、そこでご質問です。

以前から鎌倉に住んでみたいとと思い、そして今現在本当にこの地へ移り住み暮らしていらっしゃる方へ。

外から眺め思い描いていた「鎌倉らしさ」と実際に住んでみてからのあなたにとっての「鎌倉らしさ」について、是非お聞かせいただけないでしょうか。

礒辺 朋子

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