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往復書簡(14) JUANA オーナーこころ より ワンダーキッチン オーナー うりちゃんへ

【テーマ】 犬も歩けば棒にあたる~それぞれの犬生~

ワンダーキッチンオーナー うりちゃんへ

毎日暑い日が続きますね。うりちゃんは、暑いのは大丈夫ですか?僕は大の苦手で、夏はいつも玄関のひんやりとした石の上で過ごしています。

おととしの夏はあまり暑そうにしていたので、お姉ちゃんたちがカットに連れて行ってくれたのですが、ふさふさした毛をびっくりするぐらい短くカットされて、お腹が冷えて二、三日下痢をしてしまいました。ウリちゃんはカットしますか?もし良いところがあったら紹介してください!

ウリちゃんとは何度か会っただけでゆっくりお話をしたことが無いので、今日は僕の生い立ちを紹介します。

僕は生れてから飼われていた飼い主に一度捨てられています。保護センターに連れて行かれて、たくさんの犬たちと何日か一緒に過ごしました。そこにある日ある女の人がやってきて、鈴を鳴らしました。「なんだろう??」と思って近づいていくと、その人は僕を車に乗せて別の場所へ連れて行ってくれました。そして着いたところは聴導犬の訓練所でした。そう、その人は聴導犬協会の人で、保護センターにいる犬の中から音に敏感に反応する犬を聴導犬の育成訓練をするために探しに来ていた人だったのです。

それから僕なりに頑張って訓練を受けていたのですが、あまりの甘えんぼぶりに訓練をしていられなくなり、前のワンちゃんを亡くし悲しみに暮れいていた今の家族に引き取られたのです!その時に、「次の飼い主には心から愛されますように」という願いを込めて、聴導犬協会の人がこころと言う名前を僕につけてくれました。

うりちゃんはどうしてウリちゃんという名前がついたのですか?

僕は初めてウリちゃんを見たとき、「犬?猫?子羊??」と悩みました。それが僕と同じミックス犬だということを聞いて、とってもとっても親近感が沸きました。僕はよく「何犬ですか?」と聞かれてシェットランドシープドッグと、何かのミックスなので少し答えるのに困ったりしていたのですが、ミックス犬は、二つの犬種のよいところをもらって生まれてくる。という話を聞いてから、堂々と「ミックスです!!」と言えるようになりました。うりちゃんの、お店の入り口に寝そべっている姿も頑張ってソファーに登る姿も、身のつまった感じも、くりくりの毛も、何ともいえないミックス具合は一度会うと何度も会いたくなります。

うちのお母さんやお姉ちゃんたちもウリちゃんの大フアンで、うちではよくウリちゃんに会いたいね~って話しています。

ところで、最近ウリちゃんのお母さんがタイへ行ったと聞いたのですが、ウリちゃんはその間どうやってお留守番しているんですか?もしかして一緒に行ったんですか?僕は飛行機に乗るときは動物はまとまって同じ場所に乗ると聞き「もしライオンと同じ飛行機になったら怖くて死んじゃう!!と思い絶対に飛行機には乗らないと心に決めました。家族が旅行に行くときは、僕は近所の人に預かってもらいます。その時はハムやクッキーが食べ放題なのでひそかにみんなの旅行が楽しみなんです。ウリちゃんはワンダーキッチンのおいしいご飯食べ放題ですか?今度わんちゃん用のご飯があったらぜひ食べに行きたいです。うちの店でも、ケニアのカンガという布を使って「ワンちゃん用のかわいい洋服やスカ―フを作ろうと毎日僕をモデルに考えているところなので、出来上がったら是非ウリちゃんにも身につけてもらいたいです。

では、これからもオーナー犬として頑張っていきましょう!!

JUANA オーナー こころより

JUANAオーナー こころちゃんへ

こころちゃん、お手紙ありがとう。

こころちゃんって名前はとても印象的で、覚えやすくてうらやましいなぁ。それに人間にも同じ名前の仲間がいますよね。ウチに来て下さるお客様にも、人間のこころちゃんがいるので、いつかきっと人間のウリちゃんも現れると信じて、あたしは毎日お店の玄関で待っているのですが、まだ出会えずにいます。いつかは巡り会えるのかなあ・・・・。名前といえば、お店にいるようになった当初から最近までずうっと、たくさんの人とここで出会いましたが、みんな口々にあたしのことを「ウリ・カワイイ」と言ってくれるので、そういう名前なのか、と勘違いしてしまったくらいです。慣れというのは怖いもので、今では「カワイイ」くらいでは簡単にシッポを振らない、カワイクない犬になりつつありあます。 そもそも、あたしはよく「猫みたい」といわれるくらい、自由気ままで人に媚びない性格なんです。これは、うちのママに似たのかもしれません。ママたちも自由で、気まぐれで、あまり何かに執着することはないように見えます。だってあたしのことすごく大切にして、毎日カワイイカワイイって鬱陶しいくらい連発している割には、休日はコストコやハナマサの駐車場に放置して一時間以上も帰って来ないし。時々は鎌倉山のママのママ「お願い!」ってあたしを押しつけて1週間以上タイやバリにフラット出かけたりします。そういう時は、最初本当にあたしのこと、好きなのかなって思うけれど、息子のノラやゴールデンのヒナちゃんたちと一緒に過ごしているうちに、楽しくてすぐ忘れてしまいます。だって、あたしの人生ですものね。特定の人や物に強く心をうつす、ということは人間の言葉でいう「しがらみ」を増やすだけ。そのしがらみが増えすぎるとやがて雁字搦めになって身動きが取れなくなるんだぞ、ってよく継パパが言っています。その継パパとは、血がつながっている訳でもないのにすごく似ているらしく。みんなに「ウリふたつだね」って言われます。彼もMixなのかな!?何と何の?それはともかく、あたしは女の子なのに、何であんなオヤジに似てるのよ!!と思わなくもないのですが、そんな彼がよく口にする言葉は実は大好きなんです。「人生は短く、世界はあまりにも広い」~それがまして犬ならば、人間の何倍もの速さで時間が過ぎて行くのです。ボーっと玄関で寝てばかりはいられません。たとえ追いつけないと分かっていても、隣の猫のハナちゃんやいけすかないカラスたちに吠えかかって追いかけ回したり、天気の良い日の昼下がり、フラっと近所の路地をクンクンしながら一人で冒険に出るのも、あたしにとっての紛れもない生の証。日々のおこないは、それがたとえ実を結ばなくても、他人から虚しくみえようとも、自分自身が生きてるって実感が得られるなら、それでいいんだぞって、継パパはよくあたしを膝の上に乗せてお腹をさすりながら、色んな話をしてくれます。ちっちゃくって目線が低いからって、自分の世界だけに留まっていてはもったいない、生きているウチにたくさんの経験をしていろいろなモノを見た方がいいよって、よくダッコして垣根の向こうを見せてくれたりもします。あたしには、道に落ちている臭いものの方が、魅力的なんだけど。どうやらウチの店は、そいういういろんなモノやコトが、居ながらにして味わえる「どこでもドア」の入り口みたいなものらしいのです。そこで出会ったドアを開けて、みんなが自由にヴァーチャルやリアルの旅に出られるといいな。こころちゃんが居るJUANAも、そんな場所のような気がします。Middlesもカジュももちろん。鎌倉には、そういう場所がたくさんあって、素晴らしいと思います。それぞれの人生、犬生、精一杯、楽しまなくちゃ!!

ワンダーキッチン ウリより

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