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往復書簡(17) 久野木直美さんから藤村和人さんへ

【テーマ】こだわり

藤村和人様

こんにちは。

いつもお店ではおいしいコーヒーと楽しいお話で仕事休憩させて頂いております。

私はカフェ巡りが大好きで、特に鎌倉のゆっくりとした時間の中で飲むコーヒーは最高のひとときです。そしてある時、教室のあるカジュの近くにとてもおしゃれなコーヒーショップ「KING」を見つけたときは感激でした。自分は声楽講師ですが、「いつか我が家で喫茶店を開きたい」という夢をひそかに持っています。ですので、若くしてマスターをしている和人さんは「かっこいい!うらやましい!」という言葉に尽きます。

 私と和人さんの共通部分といえば、独立していることかなと思うのですが、一人でお店を経営していて一番の魅力はどんな事なのでしょうか?

私は教室を開いてから3年が経ちましたが、スタンスというか自分らしさという部分ではまだまだ試行錯誤しています。ただ始めた頃から持っている「こだわり」があります。そのこだわりとは「常に楽しく」です。相手を知るというのはどんなときでも大事ですが、レッスン中での生徒の希望に耳を傾けることはもちろん、レッスン以外での会話もとても貴重な時間と私は考えています。

この時間で私自身も楽しませて貰うことも多く、1日の達成感の中にもこの時間が含まれていると感じています。そしてこのような時間を通じて生徒が音楽を身近に感じ、楽しくレッスンに通える教室作りを心掛けています。 自分の色を作ることができるのは幸せなことですよね。

上を目指す為または趣味の1つとして、といったように音楽教室にはそれぞれの方針がありますが、私が音楽教室に勤めていた頃は1日に沢山のレッスンを受け持ち、時間に追われながら無我夢中だったと記憶に残っています。しかし同時に対話の大切さを学んだ場所でもあります。時間が無い中で「もっと一人一人と話しがしたい」という気持ちになり、「こだわり」が生まれたのでしょう。今は、私らしさを作りながら、生徒一人一人に合わせたゆとりあるレッスンをしようと意識しています。ゆっくりした鎌倉時間と共に、マイペースながらも、さらにMY教室に色が出るといいなと楽しみにしています。

素朴な疑問ですが、和人さんがカフェ&バーを開こうと思ったきっかけは何ですか?また、お店の空間作りやBMG、そして食器にも「こだわり」を持ってらっしゃると思うのですが、テーマなどお持ちなのでしょうか?「KING」で飲んでいて感じたのですが、家でも「今日はこのカップ」とか気分で変えるのもおいしく飲むポイントなのでしょうね。少し話しが逸れますが、女性のお化粧も日によってアイシャドウの色を変えたりすると、ちょっとしたことが気分転換になり、顔には非常によいことだと聞いたことがあります。ですが、そうなるとカップだけでなくそのときのBGMやお部屋の雰囲気まで作りたくなってしまうし・・・結局おしゃれカフェに足を運ぶことに辿り着くのでしょう。

仕事後に飲むコーヒーも私のこだわりの1つであり、なによりの元気の源です。教室→カフェの私のスタイルはこれからもずっと続いていくことでしょう。そんな癒しの時間を過ごせる「KING」が教室のすぐそばにあるなんて本当に素敵な出逢いだと思います。新しくなるお店も楽しみにしています。和人さんのお店での「こだわり」やきっかけなど聞かせて頂ければ嬉しいです。

久野木直美

久野木直美様

こんにちは。

いつもお店に来てくれて、ありがとうございます。

直美ちゃんとは、いろんな話をさせてもらって、楽しい時間をすごさせてもらっています。なかでも、高校が同じというのはかなりびっくりしました。その学校も合併でなくなってしまい、同窓会の最後の記念品が校歌の8cmCDっていうのにもびっくりしました。この時代にどれだけの人がそれを聴けるのでしょうかね。ちなみにうちではアダプターがないので聴けません。

さて、いつかお店をひらくっていう夢があったのですね。

いつまでも夢を持つというのはすばらしい事ですよね。

ボクもいつまでも夢をもっていきたいと思っています。

ボクは専門学生の頃から、いつか店を持ちたいと夢をもっていたのですが、いざ夢だった店を開いたとたんに、それが夢でなく現実になり、かなり衝撃を受けたのを覚えています。現実の厳しさに追われて、夢を見ている余裕がなかったような気がします。夢をキープするのは難しいことですね。

なんだか20代は、そんな葛藤を自分の中で繰り返していたように思います。でも、それが30歳になるときに、ふと、自分で20代を振り返ってみて、最初に思い描いていた”やりたかったこと”が、できていたことに気付いたのです。

きっとゆとりがなかったのですね。

今思うとボクの20代はいろいろ無茶したり、勢いで突っ走ってきたような気がします。

それができるのも幸せなことだなーと思うのです。

まぁ、まだまだ突っ走っていきますけどね。

でもボクは小さい頃から走るのが遅かったのでゆっくり。きっと、こんなんだからボクは1人でやっていくのがあってるんですよね。

たぶん誰もついて来れない。もちろん人の手も借りてですけど。人は1人じゃ生きていけないですから。全て自分で決めて行動する。

良い事も、悪い事も、全部かえってくる。

生きてるなーって感じるんですよ。

ボクはワガママだし、のんびりだし、自由でいたいんですよね。

で、こんなんだから“こだわり”みたいなのは無いんですよね。

あえて言うなら、“こだわらない”のが“こだわり”かな。固定観念みたいのが、とにかく嫌いで。常識とかって よくわからないんですよね。誰がどこで決めたんだろうって。

枠にはめられるのが昔から苦手で、それもあって1人でやってる。

ワガママですから、気分で決めてます。

楽しければそれで良し。みたいな。好きでやってることだし、思ったことがすべて。それで結果が自分にかえって

きますからね。わかりやすいですよ。そこが自分で店やってる楽しみの1つかな。

この曲聴いて、このイス座って、このカップでコーヒー飲む。良いでしょー、なんて盛り上がってる。その先に理由はないです。答えになってなくて、すいません。正直、自分でもよくわからないんですよね。

あまり“こだわらない”で、自分の思いに正直に、いつまでも夢を持ち続けていきたいなーと思っています。

何度も言いますが、ワガママで気分屋なので言ってる事はまた変わるかもしれませんので、また店にでも遊びに来てください。

いろいろお話しましょう。

藤村和人

プロフィール・・・・・・・・・1976年  横須賀生まれ

・KING coffee & beer オーナー     ・’08年6月 移転予定

(藤村さんは現在 FACTORY のオーナー)

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