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往復書簡(20) 藤田朝美さんから瀬戸けいたさん、なおよさんへ

【テーマ】 子育てとオーム貝と

Seto 瀬戸けいたさん、なおよさんへ

こんにちは。過日はアトリエでの楽しいひと時をありがとうございました。おふたりの好きなものとポリシーが充満したアトリエは、とても居心地よかったです。そして、「私も、自分ならではのものを生み出したい」「○○さんならではのもの、を紹介してばかりじゃツマンナイッ(※)」という強くて苦くて小さな種が、ガシッと植え付けられました。(※誰かのユニークな手仕事と、それを好む人とをつなぐ仕事をしたいと考えていました。) その小さな種は、しばらくイジイジした後、「お名紋づくり」という小さな形で発芽しました。家紋ならぬお名紋。その人の名前と願い事をモチーフにした、世界にひとつの紋づくりです。初めて尽くし、悩み尽くしな仕事部屋は、前より居心地よくなった気がします。

さて。そんな種まで植え付けちゃうSetoプロダクト。最近のものでは、イカの表皮に学んだテキスタイル・・ドットを塗って、自分だけのデザインを作る発想が、大好き!イカさんも、10本足、てだけじゃない個性を表現してもらえて、喜んでいることでしょう。

そう、Setoさんの生き物たちは幸せですよね。

瀬戸さんは、生き物たちを尊敬している。そしてその生き物ならではの個性を見出し、一番魅力的な形で生かすことで、人間の相棒として愛されるプロダクトにまで、育て上げてくれるから。

・・・って、この文章。「生き物」の部分を「子」に置き換えたら、子育て論になりそう?私には未知の世界ですが・・・、いま興味あるんです、子育て。お名紋をつくっていると、いろんな親御さんから、熱い名付けエピソードを聞きます。家庭ごとの価値観が垣間見えて、それはそれは楽しいです。

そこで、瀬戸家の子育てって。プロダクト同様、興味津々です。おはなし聞かせていただけますか?

大切にされていること、こんなところを見ているよ、遊びやオモチャ、あ、そうだ鎌倉に来てからこう変わったよ、なんてことも・・・どんなことでも、聞かせてくださると嬉しいです。

当初はものづくりについてお聞きしたいと思っていたのに、まさか子育ての質問になってしまうとは。私も、その作品から子育てを連想させるような、心あるものづくりをしていきたいです。

では、2009年、またSetoならではのプロジェクトにたくさん出会えることを、とても楽しみにしています!

追伸

少し前、ニューカレドニアの夜の海に潜り、オウム貝を見ました。彼らは600M程度の深海から、夜、食事のために30M程度の浅い世界まで上ってくるんだそうです。・・・水圧差20倍の長旅行!!を叶えるその秘密は、うず巻きの中の30もの小部屋。そんな偉業を全く感じさせずポヨポヨ漂っているオウム貝を見て、「小部屋が可能にするこの長旅・・・Seto的に見立てるとどうなる?」と思っていたのですよ!本当のはなし。

お名紋づくり   藤田朝美

藤田朝美さま

こんにちは。近くにいながら、ご無沙汰してしまってごめんなさい。素敵なお手紙をどうもありがとう。いつでも会える、メールも電話もあるけど、こんなかたちでひょいと「書簡」をくださる、これも素敵な「贈り物」ですね。とてもうれしかったです。

フジタさんらしい視点がたのしい『贈り物ブログ』も興味深く読んでいますが、『お名紋』もとてもおもしろい発想ですね。そうそう「名前」ってそれぞれみんな特別の想いが込められていて、その特別の名前にカタチを与えるって、すごく素敵なワークです。

さてさて、子育ての話。特別なことではないですが、わたしが意識しているのは「中庸」ということでしょうか。自分なりにこだわりはあるけれど、何事も極端な方向にブレないように、とは考えています。

例えば食事では、玄米を食べているけれど「玄米菜食」にこだわりすぎず、おいしいと思うものを食べればいいかなということにしています。我が家はテレビがないけど、こどもが保育園で覚えてくるアニメやテレビのネタは、YoutubeやレンタルDVDで一緒に情報収集したり。知育玩具をデザインもしているけど、こどもは流行のおもちゃも欲しがるし、いつの間にか親子でリカちゃん人形にはまっていたり。キャラクターやロゴ入りの洋服は買いたくないけど、こどもの好きな生地で、わたしの好きなデザインの洋服を作ろうと思ったり。

無理しない、自然とちょうどよいところに落ち着く、「中庸」でありたいと思う。

考えてみたら、それってものづくりの上でも常に意識していることです。うちの製品は、大人用とかこども用とか、男性向きとか女性向きとか、ターゲットはないし、使い方もあまり限定しない、季節も問わないものが多い。それぞれのひとのところで、ちょうどよいところに落ち着いてくれたらいいな、と思っています。「いきもの」をテーマにしているのもそういう理由なのです。「いきもの」って形態も生態も理にかなっている、自然に調和がとれていることを教えてくれるから。普段の生活でも、調和がとれていることって、とても重要だと思います。

今日もダンナとこどもは祇園山ハイキングに出かけています。仕事も生活も子育ても「いきものに学ぶ」で、身近な自然が親にもこどもにもいろんなことを教えてくれている気がします。

フジタさんの海から学ぶお話、『お名紋』にまつわるお話も、またゆっくり聞かせてください。

追伸

オウム貝の小部屋、ガスの詰まった殻内部の容積を調節して浮き沈みする仕組みは、昔から潜水艦に応用されていますね。まさにノーチラス。「いきものに学ぶ」の先駆。Seto的には、サイエンス的に応用するだけでなく、そこにファンタジーを込めたい。子育て論にかけて、やわらかいこどもを守る固い殻、オウム貝モチーフのベビーカーとか?

Seto(いきものに学ぶデザイン)  瀬戸なおよ

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