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往復書簡(26) 大社優子さんから中津川ゆうこさんへ

テーマ【遊ぶ、はたらく(端楽)】

いもここと中津川ゆうこさま

拝啓

鎌倉に住まうようになって、私はもうすぐ10年。

その間に知り合った人たちはどれほど沢山いるでしょう。

その中でも、とりわけ気持ちをオープンにして付き合えるようになった私たちは、折に触れ声をかければすぐに集まるメンバーとして、いつの間にか姉妹のような存在になっている。

‟いもこ”、その姉妹の一人と似ているということから付いた‟妹っ子”という意味のおかしなあだ名。

最初は嫌がっていたけど、何だか定着してしまったね。

私にとってもいもこにとってもこの街は心と体に優しく、すぐに色んな人や場所と繋がって、どこへいっても「こんにちは、元気?」と気軽にあいさつを交わすことができるようになった。スイスイと自転車で走るいもこを見かけると、今日も元気にそんな街の風を感じているのだろうと少し嬉しい気持ちになるんだよ。

私たちはいつの間にか年を重ねているけれど、元々遊ぶことが大好きだから、ずっと遊んでいたいと思っている。

ずっと遊ぶために、そろそろ本気にならなくちゃいけない。

少し勇気を出して、一歩踏み出さなくちゃいけない。

でも、私たちはそれを楽しんでやっていくことが出来るような気がしない?

それは、私たちが培ってきた居場所のようなものを、お互い共有しているからじゃないだろうか。それが私たちを支えているんだよね、きっと。

私は写真の仕事をしながら、キッチンシスターズというバンドでバンジョーを弾くようになった。なかなか成長しない私たちのライブに、懲りずに毎回顔を出してくれるいもこにスタンプカードを作ろうかなんて冗談も言っていたけど、付き合いとはいえ、本当に感謝している。姉妹を心配して見守っているようないもこに、こちらもちょっとは良いことろ見せなきゃ、と励みになっているよ。

私は、大きく、柔らかく、何か目に見えないまあるいものを作っていきたい。

私たち姉妹の、心地よい居場所のようなそれが、音楽にのって繋がれていったらすてきだなあと思う。

そうしたら、もう少し遠くへでかけても、いつもの調子で、「やあ、元気?」と挨拶できるかもね。

スイスイと、どこへでもいけるようになりたいね。

ささここと大社優子

大社優子(おおこそゆうこ)プロフィール

横浜生まれ。現在鎌倉在住。大学卒業後、(株)アマノスタジオに入社、同社代表写真家の森日出夫氏に師事。2001年独立。イラストやデザインを手掛けるオダギリミホのユニットduco(デュコ)として、広告、アート作品などを幅広く手掛け、活躍中。個展など多数。http://www.duco.jp

‟ささこちゃん”こと大社優子さま

拝啓

お手紙ありがとう。

そうそう、同じ「ゆうこ」という名を持つ二人なのに、ひとりは「いもこ」でもうひとりは「ささこ」。

風変りなあだ名で呼ばれあってる私たち、なんだかおかしいね。

私の鎌倉での生活は、ささこちゃんの半分ほど。それまでは岐阜から上京して都内を転々としていたのだけれど、ここの暮らしがいつも間にかこんなになじんでしまっていた。都内と比べると不便な点は山ほどあるのにね。

私たちがお互い知り合ったり深く話をするようになっきっかけは、ささこちゃんは写真、私はイラストの展示だったりと、いずれも鎌倉での活動があってのこと。

でも一番距離がぐっと縮まったのはささこちゃんのパリでの展示の時だよね。

宿を提供してくれたブルーノ氏のアパルトマンは、階下にマルシェや魚屋があり、パン屋も選び放題という、「食べるの大好き、作るの大好き」な私たちには天国のような環境。マルシェの新鮮な食材で何か作る事にいつもわくわくして、展示で疲れても夜は自炊ご飯とワインで乾杯、な日々。

約半月の共同生活、全然個性の違う私たちがずっと一緒に育った姉妹のように自然に過ごせたのは、お互い根本にある「全力で思いきり楽しむ」という精神が通じているからかな。

それは戻ってからもまったく変わらなく続いて、今の私たちがいるよね。

そして、ここのところその全力っぷりで驚いているのは、ささこちゃん率いる「キッチンシスターズ」のバンド活動。

バンジョーを習い始めたと思ったら、各地で熱心なバンド活動を展開し、時にはその筋のビッグネームも招いちゃってたり。主催イベント「鎌倉ブルーグラスサローネ」も、もう3回目なのね!ささこちゃんの周りを巻き込んで楽しませてしまうパワーには本当に感服です。小さな体にあくなく情熱を持ったささこちゃん、キッチンシスターズのライブからはいつも元気をもらっているよ。

私の方も11月開催の青山での個展の、今準備の真っ最中。

そう、確かに今は全力で思い切りやる時なのかもしれないね。思い切り楽しむ為に。

私たちは個性もやってる事もちがうけど、大事なことがこうやって姉妹みたいに通じてるってことがとてもうれしくて。そんなことが一歩踏み出す大きな力になるのだ。

ささこちゃんは大きな車でびゅんびゅんと、私は小さな自転車でスイスイと?、今日も走ってく。

いつも動いていて、いつも広がっていたいね。いい風がとおるように、ずっとそうやっていられますように。

敬具

‟いもこ”こと中津川ゆうこ

中津川ゆうこ(なかつがわゆうこ)プロフィール

セツ・モードセミナー卒。ハンドメイドの小物製作を始めた後、イラストレーターとしての活動を開始。主に女性向けの雑誌や書籍等、カタログ、Webサイト、ロゴ等のイラストを手掛ける。作品展以外にも、IKEDA ART Galleryでの布小物ワークショップ開催。江ノ電イベントでの展示、navy-yard、nabiでの布小物作品制作・Tシャツデザイン&販売など、多岐に渡って活動中。http://www.yuu-s.net/

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