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イタリアから鎌倉への手紙 2 「 収穫 」

  お元気ですか?鎌倉の秋は山の紅葉や、レンバイ市場のおばちゃんが朝からストーブの焼き芋の匂い、 夕暮れの冷たい空気と商店街の灯りを思い出します。収穫の秋、こちら北イタリアのトリノでは、2年に一度のスローフードの祭典”salone del gusto”が催され、私たちのレストランもシェフのアレクサンドラと現地のレストランの厨房を一日任され、たくさんの料理をつくりました。メニューは例えば、鱒の燻製や黒トリュフとズッキーニのパテを挟んだ小さなパニーニ、黒胡椒とチーズのピエモンテ州産のお米のリゾット、紫じゃがいもと人参の2色のスープ、自分たちで収穫した葡萄のソルベなどなど。大きな野外会場には、イタリア各州だけでなく世界各国のブースが並び、それぞれの地域の伝統料理や農産物、ワインやビールが振る舞われ、世界中から来た多くの人たちで賑わいました。

 今回の祭典では、偶然にも私の10年来の友人が日本のスローフードの代表団として参加していたので 少し紹介をさせてもらいます。友人は小澤陽祐さん、Slowというコーヒー会社の代表で珈琲焙煎人。 Slowはブラジルやエクアドルの農薬や化学肥料に頼らず栽培されたコーヒー豆を、生産者さんに正当な取引きをするフェアトレード(公正貿易)で生豆を輸入し、日本で自家焙煎して全国に卸し売りをしています。私は学生の頃に小澤さんと出会い、しごとのお手伝いをさせてもらったことがきっかけで、食のしごとをして生きていきたいと思ったのでした。コーヒーの美味しさはもちろん、環境や社会問題に対して食をとおして貢献する在り方、まだオーガニックという言葉さえ浸透していなかった頃に、他にないから自分でつくる、自分のしごとを自分でつくる姿勢に強く魅かれたことがはじまりです。問題に対して声高に反対するだけでなく、毎日の暮らしから変える在り方、自分にとって正直で好きな生き方をしごとを通して表現したいと思ったこと、何より逆境があっても、いつも楽しそうでふざけているようで実はマジメな小澤さんの人柄に影響を受けたように思います。最近では原発を使わないで会社のエネルギーを自給したい、ということでソーラーエネルギーによる発電で焙煎を始めています。

 イタリアのスローフード運動に魅かれたのも、地産地消、伝統料理を守ることで生産者さん、環境、まちづくりなどに貢献する食による社会運動というところに、私の原点を重ねていたように思います。

 さて、私の暮らすピエモンテ州はワインの産地であり、シェフの旦那さんのビオの葡萄畑でも収穫の季節です。早朝の畑に出て、日が沈むまで葡萄の汁と土埃にまみれながら皆で手狩りをしています。
ずっしりと重い葡萄のバスケットは赤ちゃんのような嬉しい重み。収穫ということが一人ではできないこと、そしてこんなにも喜びがあるものなのだということを全身で感じている秋です。

(2016年 秋・冬号)

川本真理
料理人、ピアノ弾き。
東京PURE CAFÉ、鎌倉のLife Forceを経て、現在イタリアで料理修行中。
2012年ピアノCD「カゼノカミサマノイルトコロ」発表。
カジュ・アート・スペースさんでピアノの練習をさせてもらう時間がとてもすきでした。
メールはこちら。


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