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あやつり人形

Akatsuki2301

 昨年12月に「独裁者のシンフォニー」という作品を上演しました。世界中の悪名高い独裁者に集まってもらって、今地球が直面している環境問題を解決してもらおうという内容。ポイントは意のままに各国民を操ることができる反面、危険な爆薬ともなりうる独裁者をいかにうまく操るか、というところなのですが、作品では案の定失敗してしまいます。
 この作品を作っているとき、ふと、一見すべてを意のままに操っているように見える独裁者も結局は何者かに操られているのではないか、という妄想にかられました。 それで、これらの独裁者を糸操りの人形のような動きの演出にしては、と思ったのですが、これがなかなかうまくまとまらず、最終的にはサンダーバードのような「人形振り」のぎこちない動きを採用するに至りました。

 操り人形は、古来より世界各地に伝わっていて、日本にも「江戸操り人形」と呼ばれる主要な関節に付けられた十数本の糸で緻密に人形を操るものや、黒子三人で一体の人形を操る文楽などがありますね。

 ヨーロッパにもチェコをはじめ各地に操り人形の形態が残っていますが、テアトル・ド・ソレイユというフランスの劇団が日本の文楽をモチーフにした演劇作品は、一人の役者を文楽人形に見立て、二人の黒子役の役者がそれを操るという演出のものでした。

 面白いなと思ったのは、特にヨーロッパの操り人形では人形をコントロールして意を表現する、いわば「使役タイプ」なのに対して、日本のそれでは、操り手は自分を消して黒子に徹し人形を「生かす」ことに重点が置かれている、いわば「滅私奉公タイプ」。国民性の違いと言いましょうか。

 「操り」というと宿主を意のままに操る寄生虫がいるというから驚きです。吸虫という虫の一種の成虫の住処は牛の肝臓。その吸虫が卵を産むと、卵は牛のフンと一緒に排泄されカタツムリに食べられる。カタツムリの中で幼虫が孵化すると、カタツムリはその幼虫を保護嚢で覆い甘い粘液と一緒に吐き出す。それをアリが食べると幼虫はアリの脳に入ってアリをコントロールし、草の高いところに上らせて牛が草と一緒に食べてくれるのを待つ。そして牛がそれを食べるとアリだけが消化され、成虫となって牛の肝臓に住み始めるというのです。何ともゾッとするような操りライフサイクル・・・。吸虫にはこのほかに、鳥の体内に住むためにまず餌となる魚に寄生し、鳥の目につきやすくするために宿主の魚に「死のダンス」をさせるものまであるそうです。恐ろしや・・・。

 人間も皮膚の表面から内臓に至るまで、夥しい微生物や小さな虫と共存しています。ん? 昨夜しこたま飲んだ帰り道、いけないいけないと思いつつもラーメンを食べてしまった、あの我が意に反する行動をとらせたものはひょっとして・・・。

   案外、人間を操っているのは、とても小さな生き物なのかもしれません。


2023年新春号 紅月劇団 石倉正英



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