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めんどくさい

20250324-182835

掃除後3日目の水槽

 

 「何見てるんですか?」「見ますか?」「(水槽を覗く)何もいない」「いますよ藻が」

 このCMによれば藻は世界の食糧問題を解決する可能性を秘めているのだとか。分かります分かります。それくらい藻の成長力、繁殖力は半端ない。というのも僕は日々それを痛感させられているのですから。

 そう、何を隠そう、いや何も隠す必要は無いのですが、僕はかれこれ20年近く熱帯魚を飼っていまして、この藻の生命力にはほとほと悩まされているのです。目に見えるか見えないかの断片が水槽に入ったが最後、2週間後には立派な緑色のリボンを漂わせている。それは取っても取っても再生される。水を総取っ換えしても無駄。魚とともに入り込んでしまうのです。

 様々な対策がことごとく失敗に終わった結果、僕がたどり着いた結論は悟りのような境地です。すなわち生えても良しと認め(諦め)、こまめに掃除すること。そう、藻が元気だと魚も元気、ある意味健全な水環境なのです。藻は悪者じゃない、悪者じゃないけど掃除するや否や翌日にはうっすらとガラスが緑色になってくるのを見ると憎たらしく思えてくる・・・そう、水槽の掃除というのはそれほどめんどくさいことなのです。と言ってるうちにまた藻が! あーめんどくさい!

 前置きが長くなりました。こんな風に世の中というのはめんどくさいことだらけだとは思いませんか? 掃除、洗濯、料理に後片付け、会議、打合せ、日々の仕事、初めてのグループでのパーティ、犬の散歩・・・。僕にとっては脚本を書くのも、稽古に行くのもめんどくさい! ものぐさな人でなくても、誰しも一日に数回はめんどくさいと思うのではないでしょうか?

 思うにめんどくさいという思いは、そういった物事を始める直前に湧き上がる感情のような気もします。一旦始まってしまえばめんどくささなど忘れて没頭したり楽しんだりできる。ものにもよると思いますが。そして結果、水槽は奇麗になり至福の瞬間を味わうことができる。あー美しい、熱帯魚を飼ってて良かったー! めんどくささとは幸せを味わうための通過儀礼なのでしょうか。

 「めんどくさい」とは「面倒臭い」という不思議な字を書く。「面倒」という漢字にはいったいどんな意味が?と調べてみたら、あにはからんや「目どうな」という言葉が変化したものなのだそう。「どうな」とは無駄という意味で「見るのも無駄」という言葉からきているのだとか。いつしかそれに「ん」が入って「面倒」という当て字をしたのだと。本来は「見るのも無駄っぽい」といったところでしょうか。

 口に出したことは言霊となってそれが本当になるような気がして、こと芝居の準備に携わる時はめんどくさいとは心では思っても、けっして口に出しては言わないようにしています。口に出したが最後、その作品が悪いものになってしまうような気がして。そう、口に出したらきっと「見るのも無駄な芝居」となり、面(メンツ)が倒れる=立たない作品になってしまうのではないかしらん。

 でも、少し前に、かの宮崎駿監督のドキュメンタリーを見ていたら、アニメの原画を描いているとき、しきりに「あーめんどくさい」を繰り返していました。めんどくさいと言おうが言うまいが作品の出来には関係が無いようです。



カジュ通信 2024年秋・冬号 紅月劇団 石倉正英

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