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吸血鬼ドラキュラ

20260221-201320 

根本原理公演「ちのみごぞうし」より(Photo by 山口笑加)

 

 先日、長年の夢であった吸血鬼ドラキュラの役をやることができました。

吸血鬼は、狼男、フランケンシュタインと並ぶ世界三大怪物とも言われていますが、その3人の中で、なんと言ってもビジュアル的に魅力があるのは吸血鬼ではないでしょうか。きちんとした身なりをしたイケメンでプレイボーイ、それでいてニンニクが嫌い、お日様に弱い、鏡に映らないといったキュートな一面も持ち合わせているギャップ萌え・・・。

 吸血鬼伝承はメソポタミアや古代ギリシャの時代から世界各地にあり、古代中国の文献にはすでに「吸血鬼」という名前そのものが出てくるのだそう。共通するのは冥界から蘇った存在で、人の生き血を吸うことで生きながらえることができるということ。
現在最も有名な吸血鬼と言えるドラキュラは、アイルランドの作家ブラム・ストーカーがトランシルバニアの民間伝承をもとに1897年に発表した小説で、その後吸血鬼の代名詞的存在になりましたが、その本が出版される80年ほど前、イングランドで「吸血鬼」という本が出版され評判となりました。

 当初この小説は放蕩の詩人バイロン卿の作とされましたが、実はこれを書いたのはジョン・ポリドリという医者でした。ポリドリはバイロン卿の主治医であり愛人でした。
 火山の大噴火によって北半球全体が寒冷化し「夏のない年」と呼ばれた1816年、スイスのレマン湖畔にあるディオダティ荘という別荘に奇妙な5人の男女が集まりました。そのメンバーは、バイロン卿とポリドリ、そして詩人シェリーとその不倫相手のメアリ、さらにメアリの義妹でありバイロン卿の愛人でもあったクレアの5人です。

 寒い長雨が続くレマン湖畔の別荘にこもった5人が、退屈し始めたある夜、バイロン卿が「今宵、皆で一つずつ怪奇譚を書こう」と提案しました。この時バイロン卿が書いた「小説の断片」という短いエピソードを後日ポリドリが小説として膨らませたのが上述の「吸血鬼」だったのでした。ちなみに、この時メアリーが書いたのが後世に残る名作「フランケンシュタイン」。
 この歴史的な怪奇小説が二つも誕生した特異な夜は「ディオダティ荘の怪奇談義」として語り継がれ、映画「ゴシック」のモチーフともなりました。

 ところで吸血鬼はなぜ他人の生き血を吸うのでしょう。一度死んで血を失った吸血鬼が再び生きるため、常に補充しなければならないのでしょうか(どこかから出血している?)。はたまたアル中ならぬブラッド中で、血を飲まないと禁断症状が出るからでしょうか。後者の方が当たっているように思えますが、今回の芝居の中で吸血鬼が「血を分けてほしい」と言うと、女性が「血液型は?」と問う場面がありました。血液型!? 血液型を気にして女性を襲う吸血鬼は見たことがなかったけど・・・そういえばO型の人は蚊に刺されやすいと聞く・・・蚊はO型・・・?

 と、冗談はさておき、今回の作品の脚本を書いた故・岸田理生さんは、劇中、それについてこんな面白い見解をセリフにしていました。

「血は、遠く相隔たるものを結合し、一から他へ感触を伝達しめるための手段となる媒介物なのだ。お前に血を吸われたものはまた血を吸うものとなる。吸血せよ、我が息子! この世にありとあらゆる血を混ぜ合わせ、血のカオスを生み出すのだ。その時、いのちはひとつとなる。血から生まれる戦は消失し、所有は地上から姿を消す!」
 案外、世界に平和をもたらすのは吸血鬼かもしれません。



カジュ通信 2025年夏号 紅月劇団 石倉正英





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