藍草歳時記
新潟にお住いの阿部昭子さんは、長く織り教室に通ってくださった方です。
畑に藍を植え、収穫した藍の葉でみずから蒅(すくも)つくり、藍建て。
その藍で染めた布でオリジナルブランドの服を展開されています。
今回、たなか牧子造形工房の愉快な仲間たち展 に出品されるにあたり、藍を育てる一年をご自作の短歌とともに、素敵な文章にしてしてくださいましたので、ここにご紹介いたします。(たなか)
◆ 藍を育て、蒅(すくも)を作り、染める ◆
藍の種をはじめて手にして10年になる。
最初は沈殿藍づくりに夢中になった。
その後、蒅(すくも)をどうしても作ってみたくなり、3年の試行錯誤の末、年に200Lの藍甕をひとつ作れるようになった。
現在、工房には4つの藍甕が並んでいる。ふすま、貝灰のみで管理し、どれも健在。
藍は、世界中でさまざまな方法で栽培され、染められているが、雪国で、ひとりで手作業でやっている私の一年を書き出してみた。
ここ新潟県新発田市は、雪に閉ざされる冬はシベリアから白鳥が、春は東南アジアからツバメが渡って来て、年間の仕事のめやすになる。なお、藍を始めた頃、始めた短歌が記録として役立ってきている。
【 3 月 】
・北へ発つ白鳥の声響き来て柔らかき土に藍の種蒔く
・彼岸過ぎ藍甕はほのかに香りたち長かりし冬の終わりを告げる
白鳥が北へ帰る頃に種を蒔く。プランターにばら蒔き、1ヶ月後、ポットに4、5本まとめて植え替え、頑丈な苗を作る。畑が、丘にあるため水やりが難しく、多少の日照りでに耐えられるようにするためだ。
【 4月 】
・ツバメて藍甕み麻十尺光を放つ空色に染む
・子ツバメの十のまなこに見守られ染めを重ねるまで
ツバメが南から還る頃、冬の間眠っていた藍が建ち始める。藍小屋に巣を作り、夏までに2回5匹ずつ育て上げる。巣立った後も家族そろって遊びに来るところを見ると私の藍小屋を実家だと思っているらしい。8月、南への旅たちの朝は、1時間以上、近くの電線に揃って並び、こちらを見ている。「お世話になりました」とでも言いたいのだろうか?
冬に作っておいた蒅に灰汁を少しづつ数日加えて、新しい甕を作る。灰汁はよく炒ったナラなどの硬い広葉樹の灰に熱湯を入れ、一晩おいた上澄を使う。還元菌が好むph10前後になるように注意する。うまく行けば、2、3日で建ち、染められる状態になるが、1ヶ月以上もかかることもある。辛抱強く待つしかない。
【 5月 】
・川岸にハリエンジュの花白くゆれ丘の畑に藍苗四百
・干天の熱き地面に藍苗は小さきままに葉を広げ立つ
200Lの発酵液を作るためには400株植える。日照りには、軽トラに300Lのタンクをつみ、朝晩2、3往復して水をやる。 
【 7月 】
・一番刈り終えて十日の藍の株みちがえるほどにたくましくなり
・藍苗は日照り長雨耐えぬいて青葉繁らせ刈り取りを待つ
10センチくらいまで刈り込む。その度に株はグンと大きくなる。刈り取った藍の葉は天日干し、1日かけても1キロくらいしかできない。
20キロをめざしてがんばる。
【 10月 】
・藍の畑波打つ花の二重奏白花小上粉赤花上粉
・秋空に花穂を揺らし藍の葉はか細くなりぬ命託すごと
花穂にエネルギーを集中させるためか、葉形は細くなり、色素が減少するので、蒅用の刈り取りは終わる。白花小上粉、赤花小上粉、丸葉藍の花色の違いが美しい。いろんな蜂や蝶が飛び交い、種作りに貢献。丘の畑は羽音の世界になる。
11月下旬に種を採る。
【 11月 】
・新藁で蒅仕込みて小屋出れば北より還りし白鳥の鳴く
・藍甕は冷たくなりて色も出ず冬の到来無言で語る
白鳥の群れがシベリアから帰ってくると、蒅の仕込みだ。夏の間に作っておいた乾燥葉に水をかけ、踏みしめる。まんべんなく水を吸ったら、麻布につつみ、藁の中に寝かせる。1、2日後には発酵し始め、どんどん温度が上がり、一週間くらいで六十度を超し、1か月くらいで冷める。この頃、藍甕も冬の眠りに入る。
【 12月 】
・発酵の進む蒅の筵床(むしろどこ)ほのあたたかき赤子のごとく
・七十度筵めくれば湯気上がる発酵進む蒅五日め
・大寒に屋根打つ霰聞きながら手入れす蒅に白き湯気立つ
蒅の発酵は藍小屋の2階でやる。朝晩とかき混ぜに行くが、寝ている赤ん坊の様子を見に行く時の気分を思い出す。私は三人娘を育てたが、このワクワクは今も毎年楽しめる。
冬の終わり、重さも半減し、土塊のようになり、すくもが完成する。

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