2019/06/20

さくら帯

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今年の3月、北鎌倉コットンのまりみさんからメールが来ました。

「ソメイヨシノを伐ったんですが、染料に枝、いりませんか?」ご自宅の改築のため、どうしても伐らなければならなかったその大木には、今にも咲くかという蕾が、びっしりとついているという。

そんな時期の桜の枝が手に入ることなど、千載一遇のことなので、「ぜひ、いただきたい。」とお返事しました。

明くる日、自転車に信じられないほどのたくさんの枝を積んで、まりみさんが工房にやってきました。(ありがとう!)「まだあるんです。使われるようならおっしゃってください。」と言ってくれました。まりみさんにしても、本当は切りたくなかった木、少しでも命をつなぎたい気持ちが伝わってきます。これは責任重大だ。

染織家・志村ふくみさんの「一色一生」に、「開花前夜の桜の枝で糸を染めると、まさしく桜色が染まった。」という記述があります。これを志村さんは「まるで桜の木が全身で花の色を準備していたようだ」と読み解いています。

工房でもサクラの染色は折々やっていますが、花の時期の枝はそうそう手に入るものではありません。だいたい、夏の終わり頃に市が剪定する桜並木の枝などを頂いてくることが多い。
そのころの色は、銅かアルミの媒染で櫨色香染など、茶味が強い色合いになりやすく、特にソメイヨシノは、八重桜や山桜と違って、黄色味が強く上がることが多いのです。

しかし、いただいたソメイヨシノは、そのまま花瓶に活けたら、翌日には花が咲きそうな、みずみずしい蕾がたわわについていて、枝全体も、心なしか赤みがさしているように見えます。これは今までのソメイヨシノと違う・・・。

説明できない「ざわつき」が、胸の奥に沸いてきて、「これはすぐ煮出さなればいけない」、直感的にそう思いました。

さっそく、荒切りしてある枝をさらに細かく切って、鍋にたっぷりの水をはった中に。そこでふと、余すことなく色を取り出したいと思い、アルカリ水で抽出してみようと思いたち、水に重曹を加えることに。で、点火。

他の仕事をしながらコトコトと半日煮出し、鍋を覗いて息を呑んだ。

染液が、深いボルドーワインのような色になっていたのです。

その色には、ただ「美しい」では片付けられない「なにか」が確かに宿っていました。まさに咲こうかという時期に、幹から倒された木の、口惜しさとも、情念とも思える「業」のようなものが。

恐る恐る、下処理した太番手のリネンの糸をその業のるつぼに浸してみると、色はまたたく間に糸に移っていきました。火をとめてしばらく浸したあとに銅で媒染し、ふたたび液に浸して一晩浸け置くことに。

翌朝、鍋の蓋を取ると、染液にはほとんど色は残っておらず、かすかに薄黄色の透明になっていました。糸は、そのサクラのすべてを吸い尽くし、少し茶味の葡萄酒色に上がりました。

干した糸を眺めて、頭を抱えてしまった・・・。「この先、どーすりゃいいんだ」。それまでなんとなく頭の中で描いていた織りの計画は、もろくも糸の迫力に吹き飛ばされてしまい、真っ白になってしまいました。

2ヶ月が過ぎ、3ヶ月が過ぎた頃。糸の色は少し落ち着いてきましたが、いまだ深い業にもがいている糸に、なんとか「安住の地」をみつけてあげようという気にやっとなり、経糸を準備しました。

着物の世界では季節を意識した装いが約束で、草花をモチーフにした柄の場合、その開花期を少し先取りするのが習わしです。ですが、サクラだけは、全面に花があしらわれているようなデザインに限っては、通年着ることができます。つまりいつでも咲かせられる。「これでいこう。」

この春、咲かせることが叶わなかったソメイヨシノに、いつでも咲いていられるような「安住の地」を作ってあげよう。柄は大きくせず、遠目には無地に見え、どんな着物とも合わせられて、一年を通して使ってもらえる帯にしてみよう。

経糸は普段染めためてある綿、麻、絹の中から、サクラの糸の荒ぶりを受け止めて抑えてくれそうなものを主に選び、その強さと遊んでくれそうな水色や青をアクセントに整経しました。

そこからははやかった。普段8寸帯は、機に糸がかかってから、2〜4日で織り上げているのですが、このときは、なんと1日で織り上がってしまったのです。決して、根性を出して無理をしたわけではなく、ただただ、杼を投げただけだったのに・・・。織っている間、ずっと「鎮まれ、鎮まれ」と祈っていました。

経糸たちが慰めになってくれたようで、織り上がった帯はやさしい仕上がりになったと思うのですが、いかがでしょうか。

そんな、サクラの気持ちを受け止めてくださる方に、しめていただければ幸甚です。

 

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2019/03/18

ユズ・お肌すべすべのカナリヤ色

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【学名】   Citrus junos
【英名】   yuzu
【別名】   ユ、ユウ、ユノス
【科】   ミカン科

中国揚子江上流の原産。
ホンユズは、奈良時代にはすでに渡来しており、平安時代には栽培していた記録が残っています。
対してハナユズは、日本原産であるといわれますが、定かではありません。

古名「ユノス」は、果汁を酢の代わりに用いたことから「柚の酸(ゆのす)」といわれたことに由来するそうです。これがそのまま、学名となりました。現在の「ユズ」も「柚酸」からきています。

和漢三才図会には、「柚の実は食を消化し、酒毒を解し、妊婦で食欲のないのを治す。柚の皮は気を下し、隔(胸部)を快くし、痰をなくし、憤懣(ふんまん)の気を散じさせる。」とあります。確かに、ユズの芳香には、気持ちを落ち着ける効果があるように思います。オレンジのような甘さはなく、レモンほど強い酸味は感じさせない、まさしく、和のすっきり系トップノート。

果実には、ビタミンC、クエン酸、酒石酸を含み、果皮には、ピネン精油、シトラール、リモーネンを含みます。果肉、果汁を肌につけてこすると、ひび、あかぎれ、しもやけなどの肌荒れを改善。 冬至に柚子風呂をたくのは、風邪予防、血行を促進して、神経痛や冷え性を改善、などの他、この、肌荒れ対策の意味もあるようです。リウマチには、種を黒焼きにしたものに熱湯を注いで飲むと良い、という記述も見当たります。種のぬめりに肌荒れを防ぐ薬効が特に多いといわれます。

<<ユズの種の化粧水>>※ご使用前にパッチテストしてください。
◆材料◆ ・ゆずの種(洗ってないもの、ぬめりを取らないことが大切!)
・ゆずの種の3〜10倍量の焼酎(35度)
◆作り方◆
しっかり蓋のできる容れ物にゆずの種と焼酎を入れる。ときどきゆすって混ぜながら、冷蔵庫に入れて1週間以上漬け込み、液体がトロッとしてきたら出来上がり。
冷蔵庫で1ヵ月くらい保存できる。
これに好みの分量でグリセリンを足して使う。ただし、柑橘系の化粧水は紫外線によるシミの原因になりやすいので、夜、就寝前などに使用すること。

冬の日本料理にも欠かせないアイテム。お吸い物にユズの皮がちょっと刻んであるだけで、どうしてあんなに華やぐのでしょう。柚子胡椒、バンザイ! 柚子味噌、バンザイ! 
来年はぜひ、ゆべし(柚餅子)に挑戦したいと思います。

成長が遅いことでも知られ、「桃栗3年、柿8年、ユズの大馬鹿18年」などといわれます。大馬鹿はひどいですが、実際、栽培にあたっては、種子から育てる実生栽培では、結実まで10数年かかってしまうため、結実までの期間を短縮するため、カラタチへの接ぎ木によって数年で収穫可能にすることが多いそうです。そういえば、ユズの枝もカラタチに負けないぐらいの鋭いトゲがあります。

剪定したユズの枝葉をいただいたので、煮出したところ、芳香を放ちながら、濃い黄色の液となりました。スズでカナリヤ色、銅で璃寛茶 (りかんちゃ)、鉄でうぐいす色から麹塵色

花言葉は「健康美」「汚れなき人」「恋のため息」。
5/21、12/31の誕生花。冬の季語。

◎参考サイト / 文献◎

https://ja.wikipedia.org/wiki/ユズ
http://www.e-yakusou.com/
http://hananokotoba.com/
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「薬草の自然療法」 東城百合子/著 池田書店
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第87巻
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店

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2019/03/03

リュウゼツラン・燃え尽きて白橡(しろつるばみ)

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【学名】  Agave L.(リュウゼツラン属),
      Agave americana var. marginata(アオノリュウゼツラン)
【別名】  マンネンラン, マゲイ(maguey)
【英語名】 Agave, Century plant
【科】   リュウゼツラン科

メキシコ原産。日本には、江戸時代の天保年間(1830〜44)に斑入りの種類が渡来しました。
その後、明治になって原種である葉に斑のないアオノリュウゼツランが渡来。

学名のagaveはラテン語で「高貴な」の意味。確かに、"エリザベス一世"みたいな、近寄りがたい空気感をまとっています。

アステカ文明以来、メキシコの先住民の間では、リュウゼツランの葉から繊維をとって衣服としていました。木綿以前の"原始布"なのだそうです。日本でも、木綿が普及する17世紀以前の繊維は大麻、苧麻、葛づるなどから取る草繊維が衣服を支えていました。似ていますね。

Ryuzetsuran03 (写真出典)

葉の皮(ミショテ)は、紙として用いた歴史もあるそうです。

数十年に一度しか花が咲かず、咲くとその株は枯れてしまうことが知られています。
リュウゼツランは、デンプン質が豊富で、「種を粉にひいたものはスープにとろみをつけるのに使ったり、他の粉と混ぜてパンにすることもできる。」という記述も見当たります。

そしてすごいのはここ!
その何十年に一度の開花期には、蓄えていたデンプン質を糖に変えるのだそうですよ!
もともと熱い乾燥した気候の植物ですから、その厳しい環境で花を咲かせるというのは、まさに命がけの大仕事なんですねぇ。そして、白く燃え尽きる・・・ジョーっっ!!

その糖分たっぷりの茎からは、サトウキビのように甘味料がとれまして、これをアガベシロップといいます。花芯もたいへん甘く、栄養価が高いそうです。また、花の茎はアスパラガスのように料理できるとも! やってみたーい。

この糖質を用いて作る蒸留酒を総称して「メスカル」といい、その中でもメキシコで作られる特に上等な蒸留酒が、有名な「テキーラ」です。

中央アメリカでは古くから、リュウゼツランの葉汁は湿布薬などに用いられてきました。服用すれば下痢、赤痢を癒やし、利尿効果や便通を良くする効果がある、という記述も見当たります。

2018年夏。雪ノ下の横浜国大附属の校庭のフェンス沿いあったリュウゼツラン。突如、10mほどのトウがにょきにょきと立ち、黄色い花が咲きました!
咲いているときは、通り掛かる人たちがみんな写メっていました。

冬になるとそのまま立ち枯れ、花茎の様子は、よく手入れされたマツのようでした。
数十年に一度のことなので、学校にお願いして、その枯れかけた株から葉を一枚いただきました。

「アロエのおばけ」ぐらいの構えでなめていたら、とんでもなかった。
葉の形状を龍の舌に見立てただけあり、古い葉は、刃物も容易に寄せつけないほどの硬さ!!
まるでかつお節。

なんとか、切り出しましたが、見ると、竹のような繊維の集合体でした。

戦前までは、サポニンが多いリュウゼツランの葉は、洗剤代わりに使われたこともあったそうです。(いやいや、すばらしく有用な植物ですね)
サポニンの多い植物は鉄媒染で紫が染まることが多いのですが、こちらの株は、命の火が尽きかけていたせいか、染液は黒黒としていましたが、アルミで白橡(しろつるばみ)色、銅で桑染 (くわぞめ)色、鉄で黄唐茶(きがらちゃ)
どれも総じて薄い染め上がり。大仕事を終えて、まさに戦いのリングで白く燃え尽きたような色合いでした。

花言葉は「繊細」「気高い貴婦人」。

◎参考サイト / 文献◎

https://ja.wikipedia.org/wiki/リュウゼツラン属
http://www.pfaf.org
https://horti.jp
https://tabimap.net/mex/?p=400
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

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2019/02/12

マツ・不滅の海松色(みるいろ)

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【学名】 Pinus palustris Mill.(ダイオウマツ)、
     Pinus densiflora(アカマツ)、
     Pinus thunbergii(クロマツ)
【英名】 Pine、 Japnese red pine(アカマツ),
     Japnese black pine (クロマツ),
     Longleaf pine(ダイオウマツ)
【別名】 トキミグサ(時見草)、トキワグサ(常磐草)
【生薬名】松脂(しょうし=マツヤニ)、海松子(かいしょうし=実)
【科】  マツ科

学名のPinus(パイナス)は、ケルト語の「pin(山)」が語源。
マツ属の樹木の総称。マツ属の天然分布は赤道直下のインドネシアから、北はロシアやカナダの北極圏に至り、ほぼ北半球に限られて分ぷしています。これは針葉樹としては最も広い範囲に当たります。
というのも、温度の適性が広く、亜熱帯や熱帯に分布する種でも−10℃程度の低温・組織の凍結には堪えて生存するといいます。そういうところはちょっと人間っぽいですね。強いっ!

日本には、二葉松類のアカマツ、クロマツ、リュウキュウマツ、五葉松類ではゴヨウマツ、ハイマツ、チョウセンゴヨウなどが分布します。

寒い冬にも耐え、常緑なので、"長寿の象徴"とされています。
神がその木に降りてくるのを「待つ」ことから「マツ」になったとも、葉が2つに分かれていることから「股(また)」が次第に「マツ」になったとも、久しく齢を保つことから「タモツ」が略転した、霜雪の季節を常緑で乗り切ることから「全く(またく)」とよばれ、これが訛った、など諸説。

通年常緑を保ち、樹齢が長いことから、日本では古くから「神の宿る木」とされ、様々な民俗行事や祝い事に用いられてきました。
お正月に年神を迎える門松もしかり。ちなみに、ブータンでは、客人を迎える際、家の門扉にマツを飾る風習があるんですよ。

古来、中国では「仙人が松葉を常食していた」と伝えられていて、山伏は松葉を食べて険しい山岳を旅したとされ、中国の漢方古書「本草綱目」では「毛髪を生じ、五臓を安んじ、中(胃のこと)を守り、天年を延べる(長寿のこと)」「強壮になり、歯を固め、耳目をよくす」という記述があります。

生薬としては、松脂(マツヤニ)が、古くから肩こり、筋肉痛、あかぎれなどに用いられてきました。
生のマツ葉を煎じてうがいをすると虫歯や口内炎治療の効果ありともいわれます。

マツの実、マツ葉は、低血圧症、冷え性、不眠症、食欲不振、去淡、膀胱炎、動脈硬化症、糖尿病、リューマチ、神経痛、健胃、疲労回復に効能。
マツの葉の有効成分は、
・葉緑素クロロフィル(増血作用、血液浄化、血液中の不飽和脂肪酸溶解)
・テルペン精油(ピネン、ジペンテン、リモネン含有成分・血中コレステロール除去し、ボケ、脳卒中、動 脈硬化を抑制)
・ビタミンA・C、ビタミンK、鉄分、酵素(血液の凝固、骨へのカルシウム沈着・老化を抑制し出血を防 ぐ)
・・・といいことづくめ。

松葉を焼酎につけて作る松葉酒、生葉をミキサーにかけて作るジュースなどにして服用します。
5月の新芽を干してお茶として服用するのも良いそうですよ。
いずれも、生薬として用いるときはアカマツが最適とされているそうです。ま、マツなら大体OKでしょう。

祝い事の際に用いられる絵柄に「松に鶴」が伝統的によくみられますが、実際には、ツルはマツにとまることができないんだそうですよ。
ツルと称されていたのは、実はコウノトリであったと思われます。
(こういう例は他にもあって、「梅にウグイス」も実際にはメジロです。)

江戸時代、2〜3日水につけてアクをとった葉を、干して刻んだものをタバコの代りにするのが流行ったという記述が和漢三才図会にありました。健康たばこ。愛煙家の方、いかがでしょう。

年末、近所の仲間と門松を手作りしました。竹は竹やぶから切り出したもの、そして松は友人宅で切らせてもらったダイオウマツの葉を使いました。松の内が終わったそのダイオウマツの葉を、煮出してみることに。

テレピンの良い香りが漂い、少し白濁とした薄い黄色の液となり、アルミで淡黄色、銅でうぐいす色、鉄でまさに濃いめの松葉色! そして海松色(みるいろ)など。

花言葉は、「不老長寿」「勇敢」「同情」「永遠の若さ」「向上心」「哀れみ」「慈悲 」。
1/1、 1/3、 1/19、 11/14、12/12、12/14の誕生花。春の季語。

◎参考サイト / 文献◎

http://ja.wikipedia.org/wiki/マツ
http://chills-lab.com/flower/ma-ta-02/
http://www.kobayashi.co.jp/
http://www.hana300.com/
http://www.e-yakusou.com/
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「和漢三才図絵」寺島良安 / 著 第82巻
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店

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2019/01/31

モモ・子孫繁栄の鶸色

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【学名】  Prunus persica (L.) Batsch (モモ)
      Prunus persica (L.) Batsch forma (ハナモモ)
【英名】     peach
【別名】  ミキフルグサ、ミチトセグサ
【生薬名】 桃仁(とうにん=種)、白桃花(はくとうか=つぼみ)
【 科 】    バラ科

中国原産。学名にある「persica」は、ペルシャのことで、中国から紀元前に伝わったものがその後ギリシャやローマに伝わり、ギリシャの博物学者テオプラストスが、モモをベルシャの果物と思ったことが後の近代ヨーロッパに定着し、学名に影響したそうです。

中国では、モモの実は邪気を払い、また不老不死の妙薬とされてきました。「西遊記」で孫悟空が食べるエピソードにも、この背景があります。

日本には弥生時代に伝わりました。
桃は股(もも)のことで、そこから子がうまれ、子孫の繁栄するめでたいシンボルとされました。桃太郎の物語もそれが背景です。

日本の神話は、弥生文化によって伝わった話がもとになってできたと考えられます。ギリシャやローマの神話に酷似したエピソードか多くみられるのも、中国経由で弥生時代にギリシャ/ローマ神話が形を変えて広まったからという説があります。オルフェウスが死んだ妻エウリュディケを連れ戻そうと冥界に行くお話は、イザナギが死んだイザナミを黄泉の国に連れ戻しに行くお話とそっくり。
『古事記』では、変わり果てたイザナミの追手をのがれたイザナギが、黄泉比良坂でモモの実を3つ投げつけ悪鬼を祓ったとあります。ここでモモの実が登場するのは中国の影響でしょうか。このエピソードから、モモの実は生命の実(さね)という名が与えられました。

古い神社の家紋にモモが見られるのは、この故事に由来するものと思われます。

Momo02 丸に葉敷き桃(和歌山県・須佐神社)

生薬では、種の仁を「桃仁」といい、杏仁に準ずる働きをするものとされ、煎じて服用すると、産前、産後、血の道、月経不順、更年期障害に効果があります。
蕾を乾燥させた白桃花は、下剤として用います。和漢三才図会にも白桃花は「悪鬼を殺し、大小便の通じをよくし、ニキビやソバカスを治す。」とあり、実については「多食すれば腹が張り、腫れ物ができる。害あって益なし。」とあります。 あまりに美味ゆえ、みんなが食べないように戒めているのでしょうか・・・。

あせもには、新鮮な葉をとってよく水洗いして乾燥させ、風呂にいれて入浴するとよいことはよく知られています。 ただし、乾燥していない葉は、青酸化合物を成分としているので十分換気をして入浴する必要ありです。干して乾燥させたものも、入浴剤になりますので、そちらのほうがいいでしょう。

 

中国文化圏では前述のように実を、日本では実よりも花を愛でている印象を受けますが、いかがでしょう。

Momo03_2 Momo04  (写真左:台湾、写真右:日本)

昨年春、活け込みに使われたモモの枝を貰い受けて煮出してみました。アルミでやさしい鶸色、銅で鶯茶、鉄で海松色。黄色味の強い一番液を捨てて、二番からじっくり煮出せば、アルミで薄紅色が出ると思われます。

花言葉は「私はあなたのとりこ」「天下無敵」「気立ての良さ」。春の季語。

◎参考サイト/ 文献◎

http://ja.wikipedia.org/wiki/モモ
http://www.e-yakusou.com
http://www.plantstamps.net
http://hananokotoba.com/
http://www.genbu.net/sinmon/momo.htm
・「花と樹の事典」木村陽二郎 / 監修 柏書房
・「草木染め 染料植物図鑑」 山崎青樹/ 著 美術出版社
・「和漢三才図絵」第86巻  寺島良安 / 著
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

                                  

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