緑茶・魅惑のムラサキ色
毎日のように、日本人が飲んでいる緑茶。紅茶も緑茶もウーロン茶も、実はみんな同じ「チャノキ」だと言われていますが、厳密に言うと、中国や日本で栽培されている低木タイプのものと、インド北部アッサム地方原産の高木(アッサム茶)の二種類があるそうです。
抗酸化作用のカテキンで昨今注目度の高い植物ですが、実はツバキ科であることはあまり知られていませんね。確かにそう言われてみると、ツバキの実と茶の実、とてもよく似ています。
大学の恩師寺村祐子先生の「食べられるものは染色に用いない」というポリシーに共感し、私も食べられるものは滅多に使わないのですが、例外で工房では、ときどき、古くなった緑茶で染めものをします。
といいますのも、これでしか出ない色が出るからです。
染める素材の違いや、使う緑茶の量などによって変わってはきますが、鉄媒染で、黒に近い紫色が出るのです。
これはちょっとびっくりですよ。
はじめてこの実験をして私たちを驚かせてくれたのは、工房の卒業生田保橋愛さん。ラオス産の野蚕糸が見事な茄子紺(なすこん)に染まっていましたっけ。
なにが、どう作用してこの色になるのか、皆目分かりません。
ほうじ茶ではこの色が出ないので、お茶が酸化していないほうがいいようです。
2番煎じ、3番煎じと染められますが、色は紫味がだんだん薄れて、銀ネズ色に変わってきます。写真は、シルクが30%とウール70%の混紡糸。古代色でいう「滅紫(けしむらさき)」という色名がぴったりの、ヲトナのお色でございます。
煮出していると、もう鍋に顔を浸けていたくなるぐらい心地よい香りが漂います。しあわせです。
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コメント
とっても素敵な紫色ですね。
お茶の葉で染色出来るのは知ってましたが
こんなに綺麗な色になるとは不思議。
お茶も奥が深いけど染色も奥が深い
いい勉強になります。
投稿: 鎌倉 壺中天 | 2007/11/27 10:55
壺中天さん、お久しぶりです。お元気ですか。
そうだ、お茶の専門家がこんなに近くにいらしたんだわっ!
出がらしのお茶でも色はでるので、ぜひ今度、中国茶の染色にも挑戦したいです。
いろいろおしえてください!
投稿: つる | 2007/11/27 12:15