ヤシャ ・ 闇夜の黒
もともと照葉樹林帯に属する日本列島(一部除く、かな)は、秋になると落葉する、まあるい葉っぱの木が多かったはず。つるはそんな木の雑木林が大好きです。
木漏れ日が "重くない"んですよ。歩くとシャクシャクと落ち葉のいい音がするし、風もよく通ります。
そんな照葉樹のひとつ、カバノキ科のヤシャブシ。春にバナナの房みたいな黄緑色の花が咲きます。これがちょっと不気味な感じで、ヤシャ(夜叉)の名はそこから来ているそうです。そして、秋になると俗にヤシャ玉といわれる実がつきます。小さな松ぼっくりみたい。
この実、はじめは緑ですが、しばらくすると黒くなって落ちてきます。
タンニンがとても多く含まれていて、昔から黒を染める染料として有名です。
最近は、鎌倉周辺ではありそうでなかなか見つからないんです、この木。
でも、六浦の関東学院大学のキャンパスの車道沿いに大きな木があることがわかって、時々拾いに行ってます。(この場所発見したのは工房スタッフえみ子おねえさま。さっすが!)
絹・ウールの他、綿・麻もよく染まります。黒を狙うときは、もちろん鉄媒染で。
1.染めたいものの重さの40〜50%のヤシャ玉を水から煮だす。煮沸40〜60分。
2.1に染めたいものを入れて30〜40分煮る。ウールの場合は、液が温んでから入れて、ゆっくり温度を上 げるように。
3.煮沸後、ものを取り出し、脱水。よく冷ましてから、ウールはぬるま湯であとの素材は水で洗い、再び脱 水。
4.染めたいものの重さの1%の酢酸鉄と酒石英2%をたっぷりの水に溶かし、3.を入れて15分ほど煮沸して媒染する。 ウールは液が温んでから入れること。しばらくすると、色が黒く変化します。酒石英は、ウールを媒染するときだけに入れると書いてある本もありますが、鉄媒染に関しては、水中での酸化を防ぎ、サビ染みの発生を押さえるので、私は素材に関係なく入れてます。
5.脱水し、洗う。
6.ふたたび、2の液にもどして5分ほど煮沸。色を濃くしたいときはそのまま一晩漬け置きます。
7.脱水して洗います。
残浴でもまだ染められます。色の濃淡はヤシャ玉の分量を加減して。また2番煎じ、3番煎じもイケますので、簡単に捨てないこと。
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