絣(かすり)の話 - その1-
絣(かすり)。「飛白」の字を当てることもあります。
染め絣、織り絣がありますが、もっとも手間のかかるのが、織り絣の中の括り絣(くくりがすり)といわれるものです。
経糸または緯糸を、あらかじめ計算した模様の通りにいつくかの束に分け、地の色を残したいところだけを糸や竹皮(今
はスズランテープやラップなど)で括って防染し、染めます。それをデザイン通りに並べ変えたり、織りながら動かしたりすることで、模様を出すという、たいへんな高等技法です。染め分けた糸の境が「かすった」ような味わいがあることからこの名があります。
インドが発祥といわれるこの技法は、シルクロードを通ってアフガニスタンやトルコなどに広がり、また、海のシルクロードを辿ってインドネシアに渡り、これが沖縄に伝わりました。
経糸を括って柄を出したものを「たて絣」、緯糸によるものを「よこ絣」その両方を用いたものを「たてよこ絣」といいます。絣は、糸の張力を一定に保ちながら全ての行程を丁寧に行なわないと、柄がずれてしまいます。織り手は最後まで、ある種の緊張感を持続させなければなりません。
インドのバトラ地方には有名なパトラ・サリーがあり、独特のたてよこ絣が特徴で、花嫁衣装など晴れの舞台で着る一枚として珍重されるのですが、日本では、こんなに手の込んだ技法であるにもかかわらず、キモノの場合、普段着としてしか着用できません。
ほんとうの贅沢、かもしれませんね。
海のシルクロードを通って沖縄に着いたインドやインドネシアの絣が、日本でどのように発達していったかについては次回。
※写真 左「たて絣」、中「よこ絣」、右「たてよこ絣」
いずれも沖縄の芭蕉布に見られる伝統の模様。
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