ユーカリ・悠久のオレンジ色
ユーカリ。フトモモ科ユーカリ属に属する植物の総称です。(フトモモ科って、ちょっと色っぽい感じですけど、「太腿」ではなく「蒲桃」と綴ります、念のため。)オーストラリア、タスマニアが原産です。
コアラが常食することで有名な植物ですが、実は600以上種類があり、コアラが食べるのはそのうちの数種類なのだそうです。学名の「ユーカリプタス」は、ギリシャ語で「よく覆う」を意味しており、乾燥した土地でも大きく育って、大地を緑で覆うことに由来しているといわれます。
オーストラリア原住民アボリジニの民族楽器に、イダキ(ディジュリドゥ)というホルンがありますが、これは、ユーカリの枝の中をシロアリが食って空洞になった筒を用いています。
葉からとれる精油には殺菌、抗菌、鎮痛・鎮静などの作用があります。
このユーカリでウールをオレンジや赤に染め上げる方法を学生のとき大学の授業で教わりました。
赤を狙うときは、600あるといわれる種類の中の「シネリア」と呼ばれるものを使います。コアラが食べるユーカリは、葉っぱが細長いですが、シネリアは丸葉。冬場にお花屋さんによく出回まわり、クリスマス用のアレンジなどに使われていますね。
工房では、ホテルのお花屋さんにお勤めの生徒さんが、活け込みが終わって廃棄されるシネリアをこの時期よく送ってくれるので、みんなで楽しみにしています。
まず葉っぱだけを茎から取って集め、細かくして木綿の袋などに入れてじっくりコトコト3時間以上煮出します。
はじめは黄色の成分が出てきますが、2時間ぐらいするとじわじわと液が赤くなってきます。本当に濃い赤を得るには染めたいものの5倍以上の葉が必要になってきます。普段は、2倍から3倍を用いてうつくしいオレンジ色を染めます。媒染はすずかアルミで。
同じ動物性繊維でも、ユーカリに関してはウールの方が染まりがいいようです。シルクですと、どんなに葉の量を多く用いても、オレンジ色より濃くなることはありません。
染め場は、すっとするユーカリの香りに満ちて、それを吸い込むと体の中がしゃきっとします。
染め上がったオレンジ色に元気をもらい、香りで体もリフレッシュ。ユーカリ染めは何度やっても飽きません。
※お花屋さんに売っている丸葉ユーカリには、シネリアより一回り小振りの「グニー」という種類もあります。こちらは、同じように染めても茶色にしかならないので注意。
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コメント
つるの織部屋さま
ユーカリシネレアで是非染めてみたいとあちこちさがしましたが見つかりません。乾燥葉をわけていただける書かれていたのを見つけましたが、いまでも可能でしょうか?
あれば、是非染めてみたいです。お時間のあります時にお返事いただければ幸いです
投稿: 辻 | 2015/07/22 14:02