つるの裏返し
仕事場には、今6台の機(はた)があります。毎月第1,2,3火曜日、土曜日に織りの教室をしています。
多くの人は「はたおり」と聞くと、あの、"鶴の恩返し"を思い浮かべ、障子の向こうで、見目麗しいニョニンが鶴の姿に身をやつし、優雅にパタパタやっている図を思い浮かべると思いますが、実はその「パタパタ」は機織り仕事全体のほん2割ぐらいに過ぎません。
糸を染め、その糸を巻く。
巻いた糸を経糸(たていと)として必要な長さと本数にそろえる「整経(せいけい)」、織りたい密度に経糸を広げる「幅だし」、その経糸を巻き取って機にセットする「千巻き(ちまき)、」経糸の動きを決める「綜こう通し」、それに続く「筬(おさ)通し」・・・と、連綿と続く作業は、かなり地味で、しかも 男前です。
絵本やテレビなどで、この工程が紹介されることはほとんどありません。
織り機の種類によって多少やり方は異なりますが、「千巻き」などはかなり重労働でして、コシと膝に相当な負担がかかります。
写真は千巻(ちまき)箱に、「幅だし」の済んだ経糸を括りつけているところです。
間に紙をいれながらしっかり巻いていきます。
紙をいれるのは、糸の張りを一定にするためです。
工房ではカレンダーやポスターなどをリサイクル利用していますが、昔は楮(こうぞ)に柿シブを塗った「渋紙」を使っていました。虫よけになったんだそうです。香ばしいいい匂いのする紙です。水にも強いので、型染めの型紙にも使われてきました。
夢を壊すようで申し訳ないのですが、 障子の向こうにほの見える、優雅で淑やかな織り姫の姿は、はっきり言って、み・か・け・だ・け。
ものごと、全てウラがござんす。
| 固定リンク | 0
「つるの機織り道(織)」カテゴリの記事
- 夏帯「桜蔭」(2022.04.15)
- 久留米絣(くるめがすり)(2021.07.31)
- 平織りが支えたナンバ歩き(2021.04.24)
- 小千谷縮(2021.04.11)
- 結城紬(2021.04.11)
コメント
I live so close to your museum now. i want to go visit soon. Sorry I have not been yet.
投稿: Marcellus Nealy | 2007/12/01 10:39
Wow ~ I didn't know that ! That complicated !? Oh my god !って感じですよ。たしかにおっしゃるとおりです!昔 TV Dram で 「ザ・ホテル」ってのがあったころ、ホテルマンに憧れて入社する人達が増え、入った物の〜表の華やかさと裏とのギャップに1年もしないうちにやめてしまう若者達がいましたね〜〜どんな仕事にも言える事だと思います!機織りがそんなに下準備が必要とは・・・勉強になりました。パタパタとしか思っていなかったので。
素晴らしい〜凄いです♡
投稿: midi-jimucho | 2007/12/01 16:06
Hi, jazzman! ]
Nice to hear from you!
Wow! When did you move into this area from Tokyo?
Happy for you to find a good house!
See you soon.
投稿: つる | 2007/12/01 16:07
じむちょ!
そうですよねー、ホテルマンは特に「うら」を見せてはいけない仕事ですもんね。
きっと、誰かがいつも裏で動いてくれているから物事は回っているんですよね。
投稿: つる | 2007/12/01 16:09