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2008/04/08

"ハンブルクの大工"、現る!

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先週の土曜日。気持ちのいい午後、カジュの座敷で仕事をしていて、何やら庭に気配を感じて顔を上げた。

庭の真ん中に、昔話の絵本の挿絵から抜け出たような出で立ちの、西洋人が3人立っています。
「すいません、英語できますか?」と言いながらおずおず歩み寄ってきます。「はあ、ま、ちょっとぐらいなら。」と答えたところで、私の頭はやっと、あることを思い出しました。「ははん、彼らか!」

ドイツ人のある友人が、随分前に「実は僕の友人で、世界を旅している大工がいるんだ。日本へ行くといっているんだけど、鎌倉に行ったら、世話してやってくれない?」というメールをよこしていました。で、「いいけど、じゃあ、名前とか、いつ来るとか、もう少し具体的な事を教えて。」と返事を出したのですが、その後何も言ってこないので、この話はなくなったんだと思っていました。

通称「ハンブルグの大工」と呼ばれる彼らは、C.C.E.G.(ヨーロッパ手工芸見習い協会=いわゆる「ギルド」)に属する、職人さん3人。この協会は、大工、石職人、鍛冶職人、靴職人、テイラー、建具職人などの集まりで、900年に及ぶ伝統を踏襲した技術者集団です。
技術的な過程を修了したのち、「3年と1日」という期間、故郷に帰ってはならない、という旅修行をする事になっているのだそうで、彼らはまさに、その旅の途中というわけです。

この修行旅はWalz(ヴァルツ)と呼ばれているそうです。
技術過程を修了し、開業を許されるマイスターの試験を受けるために課せられた最後の試練で、19世紀まではマイスターを目指す者(30歳以下でなければならない)には義務でしたが、20世紀になって、さすがに非効率だということになって、「企業研修でも可」になったそうです。が、今でもヴァルツに挑む見習いも多く、レネの話では現在約600人が世界中を回っているのだそうです。

その旅の間は、帽子、襟なしシャツ、チョッキ、裾広がりのズボンに杖という決められた服装で過ごすことになっていて、色が黒なら大工、ベージュは石職人を示すのだとか。(ちなみに鍛冶職人は青なんだそうです。)
上着には6つのボタン、チョッキには8つのボタンが付いていて、「週6日、一日8時間働きます」という意味なんだとか。
持っている杖は、ヴァルツを始めるときに、まず森へ行き、適した枝を見つけて自分で加工しなければいけません。
昔は乗り物に乗ることも禁じられていて、旅は全て徒歩だったそうですが、今はOK。(じゃなきゃ日本に来られないよね・笑)

ヨーロッパでは、この制服を着ている見習い職人のことは皆が知っているので、「納屋つくってくれ」とか「刃物の手入れしてくれ」とか教会の補修などのリクエストに無報酬で応え、その代わりに一宿一飯の世話になる、という約束事が出来上がっているんだそうですよ。

マイスターと呼ばれる一人前の職人になるため、技術だけでなく、人間力を磨く旅でもあるんですね。

「富士山に行って、昨日鎌倉に来た」と言います。
「え? じゃ昨日はどこ泊まったの?」
「空き地で野宿。」おいおい。

その協会の公式のロゴ入りの「風呂敷」(!)にきっちりとくくられた荷物だけが旅のお供。(写真)
石職人のレネはドイツ人、大工のローランドとエイドリアンはスイス人。それぞれ別々の国を旅していて、日本で落ち合ったのだそうです。
突然の事とはいえ、これもご縁でしょうからと、トモダチ集めた宴会や、報国寺の座禅会などに参加したりして、カジュで過ごしています。

このような制度によって、ヨーロッパの手仕事は確実に次の世代に受け継がれています。そもそも、職人に対する社会のリスペクト具合が、日本と全然違う! 


とくに決まった予定はないようだったので、「カジュ祭でワークショップしない?」と言ったら、「それ、面白そうだね。」と言ってくれて、滞在をのばしてくれる事になりました。その間に、カジュの家屋も直してくれる事になりました! やった!

たくましきヨーロッパの若き職人たちに、拍手です。
どなたか、「うちにもおいでよ。」という方、ご一報ください。

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つるの徒然日記」カテゴリの記事

コメント

Wow ~ so international your place Tsuru-san!! " Subarashi desune " 本当にそうですよね〜日本だって昔からの手作業物、者達、良い物が沢山あるのに後継者がいないとかなんとかで廃れていったり、もっと国がヘルプすべきですよね、ヨーロッパの国々の様に、企業さん達も出来れば援助してくれれば・・・ね, any way good ~ I do not know what I can help you with but let me know if you need some, good luck ♡

投稿: midi-jimucho | 2008/04/08 15:11

ほう
うちの親父とか家みせたがりそう
桜花園とかもいくとおもしろがりそうだよね

投稿: | 2008/04/08 23:20

>じむちょ
組織的サポート、全くです。でも、彼らの旅には、協会はいっさい援助をしないのだそうです。あくまでも自分の意志で、誇りをかけてこの旅に挑んでいる感じです。他人への無言の要求が多く、「人にしてもらって当たり前」の日本人と違って、彼らは本当に精神的に自立しています。どこへ行くのも、バスや電車にのるのも、はたまた医者にかかるのも、全部自分たちで調べて行動しています。あっぱれ。それだけ、この協会に属するモノ作りである事が、ヨーロッパ社会でステイタスなのでしょう。もっと彼らの事を広く知らしめたいです。日本の状況も少しは変わるかもしれませんからね。
昨日から夜行バスで20日まで富山に出かけています。(笑)

>ななしさま
どこぞの親父サマでしょう、お家をみせてくれるかもしれないのは。
そうか、桜花園、いいアイディアですね。誘ってみます。

投稿: つる | 2008/04/09 08:34

Ha, Makiko. I knew it. Who but you should be able to handle such a strange appearance as European tradesmen from the middle-ages. I think, you are doing just wonderful!

投稿: Arne | 2008/04/09 15:05

Hi, Arne. Ha,ha,ha!

Yes, I really enjoy spending time with them. I'd like to admire them from the bottom of my heart. They are so tough, relaxed in foreign country, and very independent!
Now I understand their style but before I met them I'd not be able to imagine anything about them.

Anyway, I totally got used to such dramatic happenings by the wind from West.

投稿: つる | 2008/04/09 18:38

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