クスノキ・謎多き黄色
クスノキ科ニッケイ属の常緑高木。学名 "Cinnamomum" (シナモマム)は、ギリシャ語の「cinein(巻く)+ amomos(申し分ない)」が語源で、曲がりながら巻く形の皮と、その芳香に由来します。
一般的にクスノキに使われる「楠」という字は本来は中国のタブノキを指す字でした。でも、大木になっても威圧感のないところとか、暖かな日差しがよく似合うところとかが「木へんに南」の字によく現れているような気がします。
「ナンジャモンジャ」と呼ばれることもあるそうですが、これは、立派な大木のことを総称して使う言葉だそうです。人の目を引く大木にクスノキが多いということですね。
鎌倉でも、多くの神社で、涼しい風を送ってくれる参道には、だいたいこのクスノキの大木があります。
春に葉が赤くなって落ちる変わり者。
工房で枝葉を煮出すと独特の芳香が漂います。この香りから「臭し(くすし)→クス」となったという説や「薬の木」が語源とする説もあります。防虫剤の「ショウノウ(樟脳)」はこの匂いのもとが成分です。その虫除けの効果のせいか、昔から魔除けの意味をもつ植物です。
だから神社によく植えられるのかもしれませんね。
「くす玉」は運動会や七夕祭りに欠かせないアイテムですが、元々は、香料や薬草を錦の袋に詰めて、その袋に造花などで飾り付けし、五色の糸でたらした虫除け魔除けの飾りでした。その香料に樟脳も用いられたので、この名があるようです。
たしかに、染め上がった黄色は、決して強い色ではありませんが、身を守ってくれそうな底力を感じる色です。
よく染めてみる染材のひつとですが、たいていはアルミ媒染できれいなピンクや朱鷺色が出るのに、梅雨時期の雨の日に植木屋さんが入ったとき、切った枝葉で染めてみたところ、なんと、この柔らかな黄色になったのです。こんなことは初めて。
普通、雨の日は植木屋さんは仕事をしませんが、この時はほかの予定が詰まっているとかで、無理して雨の日に剪定をしてくれたのです。雨で機嫌が悪かったところにもってきて、バッサバッサと剪定なんかしたから、スネてしまったんですね、きっと。ごめんね。
でも実際のところ、なぜ黄色が出たのかは、全くの謎です。
※この記事を書くにあたりましては、以下のサイトと文献を参照にしました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/クスノキ
http://ja.wikipedia.org/wiki/くす玉
http://www.hana300.com/kusuno.htmlZ
草木染 染料植物図鑑 山崎青樹
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