キンモクセイ・天使のくれたハッカ色
モクセイ科の常緑樹。まさに今週の鎌倉はキンモクセイ・ウィークです。嗚呼、シアワセ。
江戸時代に中国から入ってきました。より原種に近い種に「ギンモクセイ」というのもありまして、キンモクセイがご存知のようにオレンジ色の花なのに対し、こちらは白いお花。茶の湯や生け花に長けた人に言わせると、こちらの方が、ひと味香りが上品なのだそうですが、日本では滅多に見られませんね。お花が黄色いウスギモクセイというのもありまして、中国ではギンモクセイは銀桂、ウスギモクセイは金桂、そしてキンモクセイは丹桂と呼びます。
桂花陳酒はキンモクセイのお花を白ワインに漬けてつくります。
実は雌雄異株で、どういう訳か日本には雄株しかないために、実をつけることはありません。
ちょうど10月の上旬にカジュにある大木にも無数のオレンジ色の花がつき、窓を開け放つと、何とも言えない甘い芳香に、忙しさでとがってしまっていた気持ちも丸くなるようです。10月の上旬は旧暦では8月。8月の旧暦名は「葉月」が一般的ですが、「桂月」ということもあるそうです。
いくら煮ても煮くずれない固い枝葉は、けっして濃い色が得られる染料ではないのですが、鉄媒染で、たいへん品の良いネズミ色が得られるので、毎年必ず染めています。
今年は、ちょうどツボミがはじける前の木を剪定しましたのでそれを使って染めました。何の植物でもそうですが、「さあ、花を咲かせるぞ!」という前夜の草木には、特別なチカラが宿っているようです。
今回はそのチカラが作用したのか、鉄媒染で美しいハッカ色になりました。こんなことは初めてです。
その色は、ちょっと海や汐を連想させる瑞々しさをたたえていて、甘い香りに反して、シャープできりりとした印象です。恐らく、二度とはでないでしょう。
※この記事をかくにあたっては、下記のサイト、文献を参照にしました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/キンモクセイ
「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著
「続・草木染染料植物図鑑」山崎青樹/著
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