クリ・いぶし「金」
ブナ科クリ属の木の総称。北半球の温暖で湿潤な地域に広く分布していて、アメリカグリ、ヨーロッパグリ、シナグリ、チンカピングリ(すごい名前・・・)など、結構種類があります。日本には、日本在来種があります。
樹皮は灰色で厚く、縦に深い裂け目を生じるので、実のない時期でも木を見分けるのは割合簡単です。
雌雄異花で、いずれも5月から6月に開花します。雄花は「花」という形ではなく、クリーム色の房のようなものがべろ〜んと垂れ下がるように咲きます。香りが独特で、かなり生臭く、「ヒトの精液の臭いに似ている」と言われるそうですが・・・?!! ホントかいっ!
ですが実の香りの主成分はメチオナール(サツマイモの香りの主成分)とフラノン(他にはイチゴやパイナップルに含まれている)なので、芳香といってよいでしょう。
この季節、一度ぐらいは栗ごはんが食べたいものですが、日本在来種のクリの実は、渋皮が実にくっついていて、これを剥くのがかなりの重労働です。
最近、このクリの皮むきの画期的な道具を見つけて、「オオッ!」と思ったのですが、まだ使ったことはありません。どなたか、持っていらっしゃる方、感想を教えてください。
クリの樹は、材木としても優秀で、とても固く水に強いため、長く、線路の枕木に使われてきました。
カジュの縁側もクリで出来ています。壊れたところを大工さんに直していただいたのですが、その部分はヒノキで直しました。ヒノキの方が、クリよりずっと安かったからです。びっくりでした。昔は、銃床にも使われていたのだそうです。
鎌倉の雑木林には、よく自生しているクリの木を見かけます。イガがはじけたころあいに、勇んで山に足を運びますが、大抵リスに先を越されてしまいます。どうやって、あのイガをもろともせずに中の実を食べるのでしょうか。くやしい。
クリは民間薬としても知られていました。
薬用部は葉、イガ、渋皮、樹皮。有効成分はタンニンで、イガや渋皮を濃く煮出した液の冷湿布が軽い火傷を癒します。また、かぶれには、薄めた煮汁を塗ってベビーパウダーをはたくとよいそうです。
薬と同じく、染め物にもイガや枝葉の煮出し汁を使います。特にイガは優秀で、染めたいものの重さの30%もあれば充分濃い色が得られます。銅媒染で絹を染めると、渋い金色、鉄媒染で焦げ茶や漆黒が得られます。今年もスカーフを染めました。
鎌倉の十二所(じゅうにそ)果樹園は春はウメが有名ですが、今時分は、栗林もにぎわっているはずです。各種イベントも行われていますので、お問合せは鎌倉風致保存会にどうぞ。
※この記事をかくにあたっては、下記のサイト、文献を参照にしました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/クリ
http://ja.wikipedia.org/wiki/ニホングリ
「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著
「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著
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