ちはやぶる・・・
やっと、パソコンが直りました。こわれてみて、どれだけパソコンに依存しながら生きていたのかがよくわかりましたよ。オフの世界をもっと充実させなくちゃ。久々に染めの話を・・・。(パソコン、つかって・・・。)
さて、タイトルは「神」につく枕詞。「いち=激い勢いで」「はや=敏捷に」「ぶる=ふるまう」をまとめた言葉です。
在原業平が詠んだ、「ちはやぶる神代もきかず竜田川 唐紅に水くくるとは」という一首、小倉百人一首の中で一番好きな歌です。
「かみさまの世界でもお目にかかれないほどの(もみじが舞う)竜田川(の美しさ)。真っ赤に川面を括り染め(絞り染め)にするなんて。」・・・ほんと、カエデの葉っぱが折り重なる様は、「巻き上げ」という手法で、布を絞り染めにしたときの風情によく似ています。
たった31文字。なのに、その中に展開されている世界は色彩と風と音に満ち、なんと神々しいのでしょう。これを絞り染めの布に例えたあたりに、その布を纏う女性の影もチラついたりして、独特の色気もありはしませんか。憎いよ、なりちゃん。
(実はこの歌は、業平と、後に清和天皇の妃となる藤原高子との悲恋が背景にあるのです。赤く染まった川は、業平のかなわぬ恋心を表していると言われています。実際に川を見て詠んだ歌ではなく、モチーフは屏風に描かれた絵だったそうです。)
絞り染めの「巻き上げ」技法にはいろいろな種類がありまして、いちばん細かいものはいわずと知れた「鹿の子絞り」。
もっと勇壮でダイナミックなものは、愛知の「有松・鳴海絞り」(もとは九州の豊後絞りがルーツ)のなかの、「手蜘蛛絞り」のバリエーションなどにみることができます。(写真はSOU・SOU×有松鳴海絞から取らせていただきました。)
カジュのカエデもすっかり葉が落ちてしまいましたが、散った赤や黄色の葉っぱで埋め尽くされた地面は、雨が降ると色が蘇り、来月いっぱいぐらいはその錦の美しさが楽しめます。これが地面でなくて、川だったら・・・と想像するのがまた楽しかったりして。
今年のカエデの美しさは、友人のライター・久野康宏さんがブログにとどめてくださいました。括り染めにされたカジュの地面の美しさをご堪能ください。
そうそう、この歌を題材にした古典落語、「ちはやぶる」のお茶目なお話も、また一興ですね。
今年も暮れました。たくさんのありがとうを、カエデの葉に乗せて、みなさんにお届けしたいと思います。
よいお年を。
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コメント
こんばんは つる様!!
ながぁい、ながぁいご無沙汰をしておりました。
大波小波が続いて押し寄せ、
気がつけば、鎌倉の地からここ隅田川の河口まで流れてきました!!
ひとひらの心を鎌倉に残し
しばらくはここで、生きなおしです(o^-^o)
つるさんのブログから
鎌倉の風邪を感じたいと思ってます!!
投稿: はる | 2008/12/30 21:16