蘇芳(スオウ)・いいヲンナの赤紫
インド・マレーシア原産のマメ科の高木。マレー語の"sapang"を中国読みした"sufang"が「スオウ」の語源だそうです。
セイヨウアカネの赤色素は「アリザリン」という物質ですが、スオウの赤色素は心材に含まれる「ブラジリン」という物質です。
スオウは英語ではBrazilian woodと呼ばれているので、これがブラジリンの語源になっているようですね。(あれ、でもどっちが先だろ?)
生薬では「蘇方木(すおうぼく)」「蘇木(そぼく)」と呼ばれ、赤松金芳/著新訂和漢薬によれば、効能は「破血、止痛、排膿、通経、疎風、活血」。広川薬用植物大辞典では「腸炎や赤痢に用いる」とあります。
日本の古代色の中にも「蘇芳色」というのがありまして、これはいわゆる「暗赤色」。マンセル・カラー・システムの表示では"4.5R 3.7/8.8"の色。
「今昔物語集」には「蘇芳色なる血多くこぼれて」という記述があるそうですが、これは乾きかけた血の色を描写しているそうです。
ですが、スオウもほかと同じく媒染の違いによって数種類の「あか」がでます。
今回はアルミで媒染し、染色後にアンモニア水で処理して美しい「牡丹色」、鉄媒染で黒に近い紫「紫黒色(しこくいろ)」が染め上がりました。どちらも、ちょっと艶っぽいお色です。
アカネもスオウも煮出し始めると、ほかの植物とはあきらかに違う、なにやら「あまったるい」香りが漂い始めます。実は私、この匂いがあまり得意ではありません。
なんかね、「女の業」みたいなものを感じていたたまれなくなるんですよ。その場にいると、どうにも「身につまされる」感覚に襲われるのです。
以前、アロマセラピストの友人にその話をしたら、確かにアカネやスオウには、女性ホルモンによく似た作用をするなにかがあるそうで「あなたはそれが体内にたくさんあるから、うざったく感じるのよ。足りない人は、体が必要としているから"いい香り"と感じるはず。」と言いました。
ほんとかぁ? 女性ホルモンの多い少ないと女っぽさは関係ないのか? それとも、私の中にまだ眠っている「ヲンナ」が潜んでいるのか? そこを目覚めさせてくれるような男性に出会えなければ、・・・一生眠ったままかもなぁ(小笑)。
染料として用いるスオウは、日本には生えていません。チップになっているものを専門店から仕入れています。鎌倉近辺でもよく見かける「ハナズオウ(花蘇芳)」は、同じマメ科ではあるのですが、花がスオウで染めたような色をしているからこの名があるだけで、全くの"別人"。残念ながら、赤は染まりません。
※この記述にあっては、文中のリンクのほかに以下のサイト、文献を参照にしました。
・http://ja.wikipedia.org/wiki/蘇芳色
・「草木染 染料植物図鑑」山崎青樹/著
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