シダ・太古の"焦香 (こがれこう)"
理科の生物の時間をちょっと思い出してみてください。「被子植物」「裸子植物」「シダ植物」というのを覚えていらっしゃいますか。
実は私、大の「裸子・シダ植物」ファン。あの、なんともいえないアヤシい、セクシーな雰囲気が好きなんです。
「なんのこっちゃ?」という方のために、ちょっとおさらい。
裸子植物は、原始的な部類の植物で、種子を作るようになった最初の植物であるとされています。なにが「裸」なのかというと、あとで種になる「胚珠」という部分。被子植物はこれが「包まれていて見えない」のに対して、裸子植物はむき出しなのです。
次世代をもうけるための行為は動物も植物もちょっとしたヒメゴトなのに、「むき出し」というところにプリミティブなセックス・アピールを感じてしまうわけですよ。
最も初期の裸子植物は、古生代後期に出現したシダ種子植物です。その後環境が乾燥化するにつれ、イチョウ類・ソテツ類、それにキカデオイデア類が分化しました。さらに後になって針葉樹が分化し、中生代末に被子植物にその地位を取って代わられるまで、その森が地球を覆っていたのだそうです。
被子植物が、鳥や昆虫と上手に関わって次の世代を作ってきたのに対して、裸子植物は「むき出しの」胚珠でひっそりと、でも力強く命をつないできたのです。
そんな太古の昔から暗ーく生き残ってきた「シダ」には、実は結構な種類があります。ワラビやゼンマイはもちろん、ツクシもそう。
二階堂奥の野原。燦々と日の当たるところでウキウキ生えているセリやナズナを尻目に、木陰や崖には、わっさりとシダがはえています。生徒さんたちと調査したところ、トラノオシダ、ゼンマイ、ワラビ、リョウメンシダ、シケシダ、ツクシが確認できました。
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地衣類のいくつかが、ぎょっとするほど鮮やかな色を出すことは知られているので、同じ裸子植物のシダではどんな色が出るかしらとワクワクしながらトラノオシダを染めてみることにしました。
すず媒染で黄色、銅媒染で、古代色でいう「焦香色(こがれこういろ)」になりました。太古のロマンを感じさせる、深くて優しい赤銅色です。
※この記述に当たっては、文中のリンクのほかに以下のサイト、文献を参考にしました。
・光田重光/著 「しだの図鑑」
・岐阜大学教育学部理科教育講座(地学)植物図鑑:シダ植物
・http://ja.wikipedia.org/wiki/裸子植物"
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