インディゴ ・ 浄化の青
夏です。工房の染め教室ではこの時期は「藍染め」を楽しみます。
といっても、工房の藍がめは本藍ではなく、その青い色の成分である"インディカン"を合成した「インディゴ・ピュア」という粉でつくったものです。
本藍も合成藍も、発色のメカニズムは同じで、液をアルカリに保ち(還元状態にする)、その中で染色して空気中で酸化させて青い色にします。
健康な藍の液は緑色をしていて、この還元状態にすることを「藍を建てる」といいます。
本藍を建てるときは、消石灰、ふすま、お酒、灰汁(あく)などを用い、インディゴ・ピュアを建てるときは、消石灰は同じですが、後は苛性ソーダと亜鉛末を使います。
草木染めを初めて体験する方が一様に驚かれるのは、実は植物染料は、木綿や麻などの植物性繊維を染めることができないということです。
今はよい助剤があるので染められますが、昔は藍だけが例外でほとんど唯一の木綿や麻が染められる染料だったのです。
ですから、庶民の着物はほとんど青でした。その閉ざされた色の世界を払拭しようと、無限の濃淡を染め分けたり、高度な刺繍、絞りや織の技法が施されたりしていたのです(普段着に!)。
その手仕事への情熱は家族への愛であり、人間にだけ与えられた本能なのかもしれませんね。
本藍には、抗菌、防虫の効果があるとされ、またその色は、高温多湿の日本の夏の"暑気払い"の役目も果たしていました。「清め」を重んじる日本人にとって、水に通じる「青」は浄化の色なのではないでしょうか。
サッカーチームも青いし。
あ、でも闘争本能を呼び覚ますには、赤(韓国)とか黄色(ブラジル)なんかのほうがいいような気もするなぁ。
インディゴ・ピュアは、一度でそこそこの濃さの青に染まってしまうのがちょっと残念なところ。
その点、本藍は無数の淡色を染め上げます。
地方によって色名には幅がありますが、一般に知られているところでは、まず一番うすいのが「藍白(あいじろ)」、次が「瓶覗き(かめのぞき)」、そして「浅葱(あさぎ)」「縹(はなだ)」「納戸(なんど)」と、染め重ねるごとに濃くなってゆき、「藍」「紺藍」「搗(かち)」「留紺(とめこん)」「搗返し(かちがえし)」、そして一番濃い「濃紺」・・・。このほかにも、様々な下処理や混ぜ物によって多くのバリエーションと、その数だけの美しい名前があります。
昨日染めあがった色は、縹から紺藍ぐらいの間でしたね。今年の瓶は、例年になく色に透明感があります。また、井戸水との相性がいいのか、洗ってもあまり色落ちせず、色が冴える感じです。
8月24日には「藍染めの絞り」のワークショップがありますから、興味のある方はご参加ください。
合成藍でも、元気がいいと、ちゃんと青紫の泡の膜が張ります。 これを「藍の華」といいます。 |
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