クサギ・元祖みどり色
【学名】 Clerodendron Tricbotomun
【英名】 Dreiteiliger Losbaum, Clerodendrum
【別名 】 常山(じょうざん)、 臭桐(くさぎり)
【科】 クマツヅラ科 クサギ属
梅雨明けです。この遠慮のない強い日差しは、めまい症の身にはちょっと酷でしたが、いい加減、自分を病人扱いするのにも飽きたので、染めの教室を予定通り行いました。
クサギは、夏の染めものには欠かせない植物です。
英語名(属名も同じ) Clerodendrum は、ギリシャ語の「運命 cleros」+「樹木 dendron」に由来します。日本語で言えば「運命の木」。
これには、セイロン島(現スリランカ)で見つかった2種類のクサギを「幸運の木」「不運の木」と呼んだことに由来するという説と、薬効のある種類と毒のある種類があるからという説があります。
これを受けてか、花言葉は「運命」「治療」。
北海道、本州、四国、九州、琉球、台湾、朝鮮半島、中国の温帯及び暖帯に広く分布し、鎌倉にもいたるところに自生しているのが見られます。大変成長が早く、イラクサのような若木(草?)が一夏で みるみる大きな「木」になります。
和名「クサギ」の名の由来は、葉に特異な臭さがあるためで、カメムシの臭いに似ていると言われますが、カメムシのニオイを嗅いだことがないのでよくわからないなぁ。
しかしこの臭さも乾燥させたり、煮てしまったりすると消えてしまいます。
夏に白い花をつけ、秋になるとガクが赤くなり、青い実をつけます。この実を集めてアルカリ水(灰汁)で煮出して、青を染める染色法は、日本では古くから知られています。でも、十分な量の実を集めるのが結構な手間なので、私は染めたことはありません・・・。
かわりに、枝葉でこの季節にクサギでしか出ない色をいただきます。花が咲く前の若い葉をアルカリ抽出+銅媒染で、たいへん鮮やかな緑色を得るのです。緑は出にくい色なので大変貴重な植物です。カラスノエンドウも緑ですが、クサギの方が濃い色が出ます。ただ、強火であまり長く煮すぎるとアクがでて、茶色のシミになるので要注意です。
クサギは民間薬としても利用されてきました。8〜9月ころに、葉を小枝ごと採取して、天日で乾燥させたものを生薬として用います。有効成分は強い殺菌作用のあるクレロデンドリンA.Bなど。
リューマチ、高血圧、下痢には1日量10〜15gを水0.4ℓで煎じ、約2分の1量まで煮つめて1日3回食間に服用するそうです。 腫れ物や痔には、10〜15グラムを煎じた液で患部を洗うとよいとか。
地方によっては、春に出る若葉を茹でて水にさらし、アク抜きをしてからおひたしなどの料理に使用します。とくに寺院などでの精進料理にはよく見られるといいますが・・・。 また古くから、茹でた若葉を乾燥させてから保存しておいて、必要な場合に水にもどして、汁の実などにしてきたという記録もあります。冷蔵庫がなく、薬も少ない時代、殺菌作用のあるクサギを食べることが、生活の知恵だったのでしょう。
煮出した液は、深い樹海のような色をしています。絹を浸すと、ほぼ、その色を忠実に映します。濃染処理した木綿などですと、ややくすんで、うぐいす色のようになりますが、これはこれで美しい。
いよいよ夏が来たぞ! ・・・というメッセージをクサギの緑色から受け取った一日でした。
参考サイト/文献
・http://www.e-yakusou.com/
・http://ffj.jp/hanakotoba/kusagi.htm
・http://www.ffpri-kys.affrc.go.jp/tatuta/jumoku/kmt274.htm
・「草木染め 染料植物図鑑」 山崎青樹/ 著 美術出版社
・「続々・草木染め 染料植物図鑑」 山崎青樹/ 著 美術出版社
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「新和英中辞典」 研究社
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