紡ぐということ。
冒頭の写真は、今年のカジュ祭で、スピンドルで糸を紡ぐワークショップをしているM.Rさん。この、幸せそうなお顔。
糸を紡ぐという行為は、人間の仕事の中でもかなり根源的なものだと思います。ただ束ねただけでは切れたり、長さが足りなかったりする繊維も、撚りをかけることによって強くて丈夫な長い糸になる・・・。人類最大の発見といっていいでしょう。
紡ぐ道具には様々ありますが、一番原始的なものが「紡錘車」いわゆるスピンドルになります。 世界各国にそれはもういろんな形の、いろんな大きさのスピンドルがありまして、すごいのは、今でもりっぱに現役の道具というということです。
写真左から2つがメキシコのスピンドル。普通に雑貨屋に売られていたものを買ってきてもらいました。真ん中の小さいのがインドネシアのスピンドル、そして隣がアフリカのスピンドル。一番右端は、インドのチャルカです。私の持っているものは畳むと本の形になる"ブックチャルカ"という小型のもの。
17世紀になってヨーロッパで写真左のような足踏み式の糸車ができました。日本では、写真右のような座して使う糸車が使われてきました。これはアジア各地に見られます。
日本にはスピンドルはなかったのか? いえ、ありましたよ!
群馬県多胡郡(たごぐん)の遺跡からは、なんと弥生時代後期から11世紀前半のスピンドルが540も出土しているのです。何を紡いでいたかは謎なのですが、この一体は「上野国」といわれ、もっと古い名では「毛野国(けぬのくに)」=絹の国といわれていたそうで、朝鮮から渡ってきた絹業技術者が建国したという説があります。となるとやはり絹を紡いでいたのかなぁ、と思うのですが、あの有名な多胡碑の碑文の中にやたらと「羊」の字が出てくるそうで、これが地名なのか人名なのか、ほんとに羊がいたのかはわからないそうですけど、奈良時代あたりに羊がモコモコ飼われていたなんて想像するのもちょっと楽しいです。
羊毛を紡ぐスピンドルが、数からいったら一番多いと思うのですが、棉(糸になる前はこの字)や麻も紡がれていました。羊毛用のスピンドルに比べると小さいですね。重すぎると短繊維で弾力のない棉や麻は紡げないのです。
私の持っている古いスピンドルも、紡ぎ手が紡ぎながら紡錘(つむ)や軸を削った形跡があります。扱う繊維の特性にあわせて、紡ぎやすい重さに調節していったのでしょう。だから、使い込まれたスピンドルは、かなり歪んだ形なのに回したとき軸がぶれない・・・!
いつ終わるとも果てない紡ぐの仕事は、呼吸を整えて淡々と続けていきたいものです。
今年も手紡ぎ教室がはじまります。糸車やスピンドルとともに気持ちをリセットして基本を見つめたいと思います。
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