カジュマルの樹は繁る
今日は六本木に行ってきました。(電車だよ、東京だよ!) とても楽しみにしていた展覧会を見るためです。
Ban Rom Sai(バーン・ロム・サイ)の「アンダーザツリー展」。毎年12月に六本木のAXISビルで行なわれます。
Ban Rom Saiは「ガジュマルの樹の下で」という意味のタイ語で、チェンマイにある、母子感染でHIVに感染した子供たち(多くは孤児)のホームの名前です。
葉山出身でこのホームの代表名取美和さんとの出会いは2003年でした。
その年、麻心の真司さんが鎌倉宮で仕掛けた国際交流イベント「笑天」の実行委員会にいたのですが、その出展者のひとつがBan Rom SaiのSHOPだったのです。
美和さんは10年に渡り、このホームを支えてこられました。
多くの福祉施設が助成金や「人の情け」に頼り切りになりがちな中、美和さんは、そうした助成金や寄付だけでなく「自分たちが額に汗して働いて自立することを教えたい」と、様々なオリジナル商品の開発(その中には子供たちのすばらしい絵も含まれます)を手がけてこられました。(その姿勢が新たな協賛企業や支援者を獲得しているというすばらしい好循環。)
衣類、ステーショナリー、生活雑貨、アクセサリー・・・そのクォリティは「福祉施設の手作り品」のレベルをはるかに超えた、デザイン性に優れたモノばかり。
会場は、美和さんの活動に共感する人はもちろん、そのグッズの魅力に惹かれてやってきた買い物客も大勢います。
今日は美和さんをホストに、HIVをとりまく状況についてのトークショーがありました。
ゲストは岩室紳也さんと、妊娠中にHIV感染が判明したという女性。
HIVについては、美和さんとご縁ができてからずいぶん勉強した気になっていましたが、まだまだ自分は無知だと痛感しましたよ・・・。とにかく、日本の社会のHIVに対する意識と知識の低さの現状を聞いて唖然としてしまった。
と同時に、もはやHIVやエイズは普通の「慢性疾患」として扱えるほど、医療が発達した現状も見えて、ちょっとうれしくなりました。妊娠中に感染が判明したゲストの女性も、無事出産。子供に感染はなく(というか、出産前に母親がそれを知っていればほぼ100%安全に産める)、二人目も、三人目も産める状況なのだといいます。報告されているだけで、日本には母親がHIVに感染していて、子供に感染せずに出産をした例は400件あるそうです。
アメリカ人の知り合いに同じケースで感染した人がいるのでその可能性は知っていましたが、この女性の感染経路は、実は「入れ墨(タトゥー)」だったのです。本当に身近なところに感染源があるのに、私たちはあまりに無防備です。
タイに暮らす美和さんのお話で印象的だったのが、「日本に帰ってくると、いつもみんなが『一生懸命に大変そうにしている』と感じます。日本人は恐怖やマイナス思考を原動力にして生きている感じがしますね。でも、問題は、起きたときに対処する方法を考えればよいのです。その人を褒めることで能力を引き出し、それによって幸せに生きる方がよっぽどいいじゃありませんか。」 ああ、この一言を聞くために今日は東京にきたんだな、私。
2003年に、ちょうど来日していたBan Rom Saiの数人の子供たちと、当時息子が通っていた地元の小学校との交流会を企画したことがありました。
担任の先生、校長先生、懇談会に集まったクラスの保護者の方たちは、皆好意的で、「やりましょう!」ということになったのですが、後になって、一部の家庭から「やっぱり、不安が拭えないのでやめてほしい。やるならうちの子は学校を休ませます。」というメールが学校に入り、断念したという苦い思い出となりました。その貧しい知識と発想が今の鎌倉の一般家庭にもあるということがわかって、今でもこれは痛恨の極みです。この貧しい状況が、先進国で唯一、感染者が増えている日本を作っているのですよ。
このとき実現しなかったこの企画、おつるは絶対にリベンジしてみせますよ。
むずかしいことはさておき、とにかく、この展覧会は楽しいです!
26日(土)まで。みなさん、ぜひぜひ、行ってみてください!
会場の写真はこちら。
Ban Rom Saiは今年10周年。今では敷地に素敵なゲストハウスもあります。
そのポジティプで、力強くて、たのしくて、ゆったりした活動の様子を遠くから見るにつけ、かくもガジュマルの樹は美和さんのもと、こんなに蒼々と繁ったのだなぁと、共感と尊敬の気持ちが湧いてきます。
カジュのカエデもこんな風に繁るといいな。
![]() | かわいいランチボックス(写真)と子供の絵が表紙の手漉きノートをつれて帰ってきましたよ。 |
p.s. Ban Rom Saiは鎌倉の六地蔵のところにアンテナショップがあります!
| 固定リンク | 0
「つるの徒然日記」カテゴリの記事
- 宮脇ワールドにひたる。(2025.06.04)
- 自分のために。(2025.05.29)
- 松本ぬのといと、終わりました!(2025.05.27)
- 教室風景(2025.05.21)
- そらまめ天国(2025.05.21)
コメント
ご無沙汰しています。
ふゆのおくりもの展、行きたかったです~。
六本木のこちらの展覧会も、とてもすてきですね。
日本を離れて異文化で暮らす日々の中、残念ですが名取さんの言葉に頷く部分も多いです。
NZに行く前は、よく言われるように日本は島だからかなと思ってたのですが、
NZも島なのでそれだけとは言えないですね。
もう少し、力をみんなが抜けるといいですね。
一人一人が、いい意味でもうちょっとルーズになれば・・。
それから、英語ってほんとにほめる文化に根ざしている言葉だなと思います。
(何かあるとすぐ「cool!」とか。)
そういうのももちろん関係あるのでしょうね。
みんな、もっとほめあって、謙遜しすぎず「ありがとう!」ならきっともっと楽しいですよね。
(昔、そうやってて上司に怒られたことがありますが・・。難しいところです。)
投稿: rie | 2009/12/27 19:24
>rie
お元気ですかー! 染めまくり、紡ぎまくり、そして人と会いまくりの日々をお過ごしのことと思います。
日本の文化の根底には「ひがみ」があるのだと思います。だから素直に人を褒められない、人の自慢話を楽しく聞けない・・・。おっしゃるように英語圏の人たち、その辺はとても褒め上手ですよね。
人と比べて幸せを推し量らない、誰とも違う自分という存在を素直に愛していれば、もっと楽にいきますよね。
NZ便り、カジュ通信にいただこうかしら。
--昔、そうやってて上司に怒られたことがありますが・・。
けけけけけ。
投稿: つる | 2009/12/27 21:07