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2010/01/20

五倍子・古き良きブルーブラック

Fushi03_2 Fushi02 Fushi (写真右端のみ
from e-yakusou.com)

冒頭の三つの漢字は「ごばいし」とも「ふし」とも読みます。
ヌルデ(ウルシ科)の木につくヌルデシロアブラムシがついて生じた"虫こぶ"のことです。このアブラムシがつくる虫こぶを特に、ヌルデノミミフシといいます。

50%以上がタンニンでできており、1713年刊行の「和漢三才図絵」(寺島良安/著)にも記述があります。薬用、お歯黒、入れ墨、染料、インクの材料として利用され、1862年からは外国に輸出されるようになりました。
漢方薬店で手に入ります。
虫こぶはその虫の"巣"で、染色には虫が出て行った後の「空き家」を用います。木にできているものを採取する場合は鎌倉近辺でしたら11月〜12月ごろがよいでしょう。工房では中国製を購入して染めています。

昔から黒を染める染料として知られており、鉄媒染でしっかりとした美しい青みの黒を得ます。( 染めるものの性質によっては紫がかったり、焦げ茶、漆黒になったりします。)
乾燥した五倍子を染めたいものの重さの30〜100%用意し、ハンマーで砕いて、30〜60分ほど煮出します。たいへん異様なニオイがするのがちょっと辛い・・・。(ドンナニオイカッテ? 遊びにきてくださればかがせて差し上げます。)

今日は染めの教室でウール、絹、木綿などを染めましたがどれも美しい滅紫(けしむらさき)色になりました。

もう一つ「没食子(もっしょくし)」と言われる別の虫こぶと同様、ヨーロッパでは鉄と反応させて青黒いインクを得ていました。(ブルーブラック・インク)

このブルーブラックのインクは、長く"ペン"の歴史を支えました。
万年筆が発明されてからはインクも合成だったはずですから、何色にでもできたはずなのに、なぜかカートリッジに入れられるインクはブルーブラックが多かったですよね。

以前、祖父の遺品を整理していたときに仕事上の研究でつかっていた古い大学ノートがでてきたことがあります。ブルーブラックの万年筆書きの文字は、いまではすっかり変色し、線の色が 青や茶など何層かに分かれていて独特の美しさが漂います。

この時代の人の"文字を書く"行為には、今では失われてしまった気品がありますね。墨にしてもインクにしても、文字にして残す、とどめる、ということにある種の祈りや願いが感じられます。いまのようにお手軽に消せるツールで書いた文にはもうこの"魔力"は宿らないな、と思います。

生薬としては、そのタンニン質を止血、健胃、下痢止め、消炎などに用います。

お歯黒は、やはり鉄と反応させて得る黒い液(タンニン酸第二鉄)で歯を黒く染める風習で、平安時代には男性の化粧であり、江戸時代になって主に既婚の女性の習慣となりました。
地方によっては代用として、ヤシャブシやキブシの実、カラコギカエデの葉の煮汁などを用いるところもあったようです。
「お歯黒女性に歯医者はいらぬ」といわれたように、歯の表面の細菌の繁殖を押さえ、歯ぐきを引き締める効果があったそうです。やってみようかな。

鎌倉の広町の谷戸にはヌルデの大木があるので、ぜひ、この虫こぶも観察してみたいと思います。

Hiromachi16 ←葉は、分かれているようでいて、これ全体で一枚の葉。
Imgp75112 【お歯黒の作り方】
茶、酢、粥さらには麹等を含む水に
焼いたくず鉄を入れ2〜3ヶ月冷暗所で寝かせる。
すると液は発酵して茶褐色となり、
これが「お歯黒水(鉄漿)」となる。
これを沸かし、粉にした五倍子の粉「ふし粉」を混ぜて
歯に筆や布で塗布する。
photo from this site

【参考サイト/文献】
http://www.e-yakusou.com/
http://as76.net/plant/nurude.htm
http://www.jda.or.jp/park/knowledge/index04.html
http://sei-ji.at.webry.info/200710/article_16.html
・「草木染め 染料植物図鑑」 山崎青樹/ 著 美術出版社 
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「虫こぶ入門」薄葉 重/著 八坂書房

(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房  禁転載

     

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鎌倉・染色彩時記(染)」カテゴリの記事

コメント

かっこいい色!

つるさんのアトリエは楽しそうですね〜。
近いのに行ってないな…。

投稿: junko@midi | 2010/01/26 08:30

来て来て。

投稿: つる | 2010/02/02 00:09

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