ベニカナメモチ・美容と健康の褐色
※写真中央のみ→出典
先月、工房のスタッフE子さんの稲村ケ崎のお宅で、なんとブロック塀が壊れてしまったそうですす。そのとき、塀沿いに植えられていたベニカナメモチの木がいっしょに倒れてしまい、E子さんが枝葉と咲いていた花を少し持ってきてくれました。
別名ベニカナメ、アカメモチ、アカメカシ。カナメモチの学名はPhotinia glabraで、「Photinia(フォティニア)」は、ギリシャ語の 「photeinos(輝く)」が語源。
春から初夏にでる新葉が赤く輝くことからこの名があります。全体の姿はサンゴジュに似ていますが、葉がもう少し薄く軽い印象。鎌倉でもあちこちで生け垣に使われているのを見かけます。
ベニカナメモチはカナメモチの一種。単にカナメモチの春の赤い新芽を称しベニカナメモチと呼び習わしてしまった経緯もありますし、オオカナメモチとの交配でできた種類はレッド・ロビン(セイヨウベニカナメモチ)と呼ばれますが、ベニカナメモチと同一視されることが多いようです。東アジアを中心に6種類以上が確認されています。ややこしい。
カナメモチはいずれも3月から4月頃に伸びてくる新芽がひときわ赤いのですぐそれとわかります。
この若葉の赤は、今売り出し中の「アントシアニン」。
ポリフェノールの一種で、毛細血管を強くする働きから、目に良いとされていますね。このほか、強い抗酸化力や活性酸素を抑制する効果があり、ダメージを受けやすい細胞膜を守る働きがあるといわれています。
つまり、まだ柔らかく葉緑素も十分形成されていない若葉を初夏の強い紫外線から守るために、新芽が赤いのです。
すごいわっ、紫外線対策バッチリなんて。
E子さんが持ってきてくださったのは若葉ではありませんでしたが、煮出した液は赤く、銅媒染でビワやサンゴジュに劣らない赤茶が得られました。
「赤が出る」と聞けば、植物染色に携わる人間は何だってします。
この結果を見れば、当然、赤い新葉だけを集めて染めてみたくなるぢゃありませんか。
それからというもの、あちこちで「ベニちゃんの新芽募集!」を呼びかけたところ、800グラムの新芽を届けてくれたのは、ご存知、植木屋大島さん。極楽寺のあるお宅の剪定で出たものを届けてくださいました。深謝。
前回もそうでしたが、煮出すと、ぷぅんとシナモンに似た香りが漂い、とても心がなごみます。シルクのスカーフが銅媒染で黄色みの濃い褐色、鉄でセピア・ブラック、アルミで温かみのある山吹色になりました。
寺村先生のご本によれば、赤みを強くするには「水1リットルに20ccの塩酸を加えた液で煮出し、銅媒染にする。塩酸はステンレスを腐食させるので、ホーローのバットを用いること。」とあるので、
今度はそれでやってみましょう。
民間では葉をリウマチや痛風などに用いることがあるそうです。
花言葉は「賑やか」。・・・たしかにね。
【参考文献/サイト】
・http://had0.big.ous.ac.jp/index.html
・http://ja.wikipedia.org/wiki/カナメモチ
・http://www.weblio.jp/content/カナメモチ
・http://www.ffpri-kys.affrc.go.jp/tatuta/jumoku/kmt160.htm
・http://kawasakimidori.main.jp/webzukan/benikanamemoci.html
・http://www.hana300.com/benika.html
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink/botan/flower2/flowers.htm
・「続・ウールの植物染色」 寺村 祐子/著 文化出版局
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「続々・草木染め 染料植物図鑑」 山崎青樹/ 著 美術出版社
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