マツヨイグサ・宵の闇色
オオマツヨイグサ、 アレチマツヨイグサ、 メマツヨイグサ、 コマツヨイグサなどさまざまに種類があるマツヨイグサ。どれも花は夕暮れ時に咲き、昼過ぎにはしぼんでしまう夜行性であることから「待宵」の名がつきました。(昼咲きのものもありますけどね)
江戸時代に南米から観賞用に輸入され、その後急速に日本各地で自生するようになりましたが、昭和50年代以降減ってしまいました。
同じアカバナ科マツヨイグサ属のツキミソウ(月見草、学名 Oenothera tetraptera)と混同されることが多いのですが、本来は白い花を咲かせるものを月見草といいます。今では自生しているものはほとんど見かけられません。ちなみにピンク系の花がつくものはユウゲショウ(夕化粧)と呼ばれます。
太宰治の「富嶽百景」の中にある有名な一節「富士には月見草がよく似合う」に歌われているのは、実はマツヨイグサだと言われています。たしかに、富士山の夕暮れ時には、黄色い花が咲くマツヨイグサの方が絵になりますね。
鎌倉では滅多に見られませんが、御成小学校の前の空き地に珍しく群生を見つけたので試染してみました。
ここはつい最近までモデルハウスのあったところ。マツヨイグサは、荒れ地に一番最初に根付く「パイオニア植物」なので、モデルハウスが撤収され更地になったところに、真っ先にお目見えした様子。ただ、パイオニア植物は他の植物が台頭してくると姿を消すことが多く、同じ空き地に見かけたセイタカアワダチソウの勢いを見ると、来年はないかもしれません。
花は天ぷらや和え物で食べられます。ネイティブアメリカンが万能薬として古くから用いてきた植物でもあります。それがアメリカ大陸に渡ってきた白人に伝わり、これがヨーロッパに輸出されるようになってその多岐に渡る薬効で人気の薬になったそうです。
またメマツヨイグサの油は「月見草オイル」の名で知られており、近年の研究ではガンマ・リノレン酸という脂肪酸を含んだ数少ないオイルであることがわかり、様々な効能が報告されています。ダイエットや美肌作りにもいいんだって。
漢方では「山芝麻」という生薬。鎮痛(湿布)、動脈硬化に薬効があるとされます。
竹久夢二が失恋した恋人を詠んだという「待てど暮らせど来ぬ人の宵待草のやるせなさ」(ほんとは待宵、宵待は夢二の誤用)の歌のせいか、夜に咲き、朝にはしどけなくすぼまる花の様子のせいか、昼間見るマツヨイグサには、前の晩のヒミツの情事の余韻に浸って朝寝しているヲンナ・・・のような風情が感じられます。
タンニン質が多いのもあり、鉄媒染で得られる黒が独特の色気を放って特に美しいです。
花言葉は、「ほのかな恋」「移り気」「静かな恋」「浴後の美人」
6/2・6/21・6/28・7/22の誕生花。
【参考サイト/文献】
・http://www.e-yakusou.com/
・http://had0.big.ous.ac.jp/index.html
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink/
・http://epo-supple.jugem.jp/?cid=1
・「ウールの植物染色」 寺村 祐子/著 文化出版局
・「草木染め 染料植物図鑑」 山崎青樹/ 著 美術出版社
・「季節の野草・山草図鑑」高村忠彦/監修 日本文芸社
・「よくわかる山菜大図鑑」今井國勝・今井万岐子/著 永岡書店
| 固定リンク | 0
「鎌倉染色彩時記(染)」カテゴリの記事
- ウイキョウ・妖怪召喚の蒸栗色(むしぐりいろ)(2024.11.29)
- カイヅカイブキ・昇り竜は萱草色(かんぞういろ)(2024.11.28)
- レモングラス・爽やかすぎる草色(2024.11.13)
- シークワーサー・南国発の淡黄色(2024.11.12)
- メラレウカ・ふとももパワーの漆黒(2024.10.30)
コメント