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2010/07/09

ノウゼンカズラ・樹海の翠(みどり)

Nozenkazura05  Nozenkazura04

中国原産。幹から気根を出して樹木等に登る、這い登り型のつる植物。
学名はCampsis grandiflora。Campsis は「ノウゼンカズラ属」を表し、 ギリシャ語の 「Kampsis(湾曲、曲がっている)」が語源。 おしべの形が曲がっているところから。 grandifloraは 「大きい花の」の意。

別名・生薬名の「凌霄花(りょうしょうか)」は漢名からで、 「凌」は”しのぐ”、 「霄」は”そら”の意味で、つるが木にまといつき天空を凌ぐほど高く登る様子から。

日本には平安時代に中国から渡来し、主に薬として用いられていました。
凌霄花は肝に働き血液の流れを良くして、月経不順や腫瘤、産後の出血に効能、根(生薬名=紫葳根(しいこん))にも同様の効果があるほか、痛風、リュウマチ性関節炎などに効能があるそうです。ただし、妊婦には使用してはいけません。
西洋では、血液浄化、利尿、胃腸のガス抜き、解熱に効果ありとされています。

夏に華やかなオレンジ色の花が咲きます。どういうわけか日本ではめったに実をつけませんが、まれに、キヌサヤ豆のような実が確認されることがあります。

昨日、大町にある妙本寺さんにお願いして、花盛りのノウゼンカズラのツルを少し分けていただきました。今まさに、見事な晴れ姿です。

以前このブログの徒然日記にも書いたのですが、オレンジ色は、普段なら私にとって元気の出るポジティブカラーなのですが、この花のオレンジ色にはなにか説明しがたい悲しいオーラを感じてしまいます。

その空気感は、曼珠沙華(マンジュシャゲ)や蓮(ハス)に通じるもので、なんだかこの花の回りにだけ彼岸への入り口が開いているように見えるのです。その物悲しさを背負っているからこその輝きが、見る者の心に沁みるように思えます。

いただいたツルと葉をアルカリで抽出したところ、どの媒染でも驚くほど鮮明な翠(みどり)を得ました。煎じた液はさほど緑色という訳ではなかったのに、媒染する前からどの素材も鮮やかな翠色になり、特に鉄で媒染したものが、樹海に足を踏み入れたような"体内回帰的"心地よさの深い色でした。滅多に出る色ではありません。
(※この時作成した色見本は、2023年現在、かなり色が変化して、アルミは鶸色(ひわいろ)、銅は鶯色(うぐいすいろ)、鉄は麹塵色(きくじんいろ)になっています。)
Nozenkazura05_2

花は酢酸抽出でアルミで媒染したところ、絹にだけほんのり紅がさしたような色が移りましたが、実用には向かない様子です。

花言葉は、「栄光」「名誉」「華のある人生」「女性」「名声」「評判」「遠い国」など。

7/15・8/6・8/14・8/19の誕生花。俳諧では夏の季語。

【参考サイト/文献】
http://www.hana300.com/
http://had0.big.ous.ac.jp/index.html
http://members.jcom.home.ne.jp/tink/
http://www.epochtimes.jp/jp/2009/07/html/d78849.html
http://www.pfaf.org/
・「続々・草木染め 染料植物図鑑」 山崎青樹/ 著 美術出版社
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店

(C) たなか牧子造形工房  禁転載

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コメント

こんにちは

つるの織部屋さんのノウゼンカズラで染められたきれいな緑にあこがれ、我が家の庭のノウゼンカズラでアルカリ抽出を3番めまで煮だしましたが、赤み帯びた茶色の液しか出てきません。ためしに染めましたが緑には程遠いベージュです。使ったのはオレンジ系の花の咲くノウゼンカズラです。タンサンソーダのアルカリ抽出です。 おついでの時にお返事いただければ幸いです。

投稿: | 2014/07/11 13:59

こんにちは。
コメントありがとうございます。
恐らく同じノウゼンカズラだと思いますが・・・。はい、炭酸ソーダ
いれてPh9ほどで染めました。

緑は滅多に出ません・・・。私もびっくりしました。
そめものは、ちょっとしたことで色が転びますから、緑は千載一遇だったのかもしれません。
この時はあまり木質化していない、若い枝先ばかりを集めて染めました。

今の季節でしたら、クズ、クサギがおすすめです。

あまりご参考にならず、ごめんなさい。

投稿: | 2014/07/18 20:37

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