ミョウガ・忘却の黄昏色
学名Zingiber mioga。東アジアが原産。本州から九州に分布ショウガ科の宿根茎多年草。Zingiber(ジンジバー)は、サンスクリット語の「sringavera(角形の)」が語源。 根茎の形から。
古い時代に中国から渡来し、栽培されてきた植物と思われますが(原種が存在しない)、現在は野生化していて、鎌倉では湿気の多い人家の庭や空き地によく見かけます。
名前の由来には面白い逸話がいくつもあります。大陸からショウガとともに持ち込まれた際、香りの強いほうを「兄香(せのか)」、弱いほうを「妹香(めのか)」と呼んだことから、これが後に
ショウガ・ミョウガに転訛したという説や、以下の民話などがあります。
【周利槃特(しゅりはんどく=チューラパンタカ)の話】
釈迦の弟子のチューラパンタカは自分の名前さえ思い出せないほど物忘れがひどく、釈迦は名札を与えたが、それも忘れてしまい、とうとう一生自分の名前は覚えられなかった。
釈迦はチューラパンタカに1本の箒を与え、「塵を払いて、芥を除かん」と唱えながら掃除をするように言った。長年この言い付けを守って修行を続けたチューラパンタカは、自分の心の塵や垢をすっかり除くことができ、ついに阿羅漢(聖者)とまでなった。
のちに病死したチューラパンタカの墓から見たこともない植物が生えてきたとき、人々は、生涯、名を荷なって生きたチューラパンタカにちなみその植物を「名荷」と名付けたという・・・。
ミョウガの葉を干すと高級な馬の草鞋(わらじ)の材料になったことから、庶民がミョウガの芽を食べてしまうのを防ぐために、江戸時代、大名がこのチューラパンタカの物語を引いて「ミョウガを食べると物忘れがひどくなる」という噂を広めたという話もあります。なんか、かなりせこい話ですが。
この「ミョウガを食べると物忘れがひどくなる」をベースにした古典落語「茗荷宿」は有名ですね。でも、科学的にはミョウガには特に物忘れをひどくする成分はないのでご安心を。
近年の研究では、逆にミョウガの香りに集中力を高める効能があることが報告されています。
眼の疲れには、根茎を摩り下ろした汁を薄めて、眼の上に温湿布、 しもやけには、根茎の摩り下ろしたものを患部に温湿布、乾燥させた茎葉は、疲労回復などに浴湯料として用いる、などの民間療法も伝わっています。
ところで、「ミョウガ」って、ミョウガのなんなのさっ、と長年不思議に思っていましたが、正確な部位の名は「花穂」で、「茎」の変形したものということのようです。この「花穂」の先に夏花が咲きます。
採っても採ってもまだまだあるカジュの庭のミョウガ。そろそろ飽きてきたので、茎と葉を刈って染めてみました。
染液はかなり濃い赤茶になったので「よしっ!」とかなり期待して素材を入れてみましたが、意に反してどの媒染でもうすらぼんやりした癒し系の色に・・・。「あれ、もっと染まるんだったっけ?」ととぼけた台詞が鍋から聞こえてきそうでしたよ。(笑) 「物忘れ色」とでも名付けたい。
花言葉は「忍耐」「失恋から立ち直る」
【参考サイト/文献】
・http://www.e-yakusou.com/
・http://www2.mmc.atomi.ac.jp/
・http://had0.big.ous.ac.jp/index.html
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink/
・http://newpfaf.webhost4life.com/user/default.aspx
・http://www.hana300.com/
・「学生版 牧野日本植物図鑑」 牧野富太郎/著 北隆館
・「季節の野草・山草図鑑」高村忠彦/監修 日本文芸社
・「新和英中辞典」 研究社
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