タイサンボク・貫禄の銀鼠
【学名】 Magnolia grandiflora
【英名】 Southern magnolia, Evergreen magnolia
【別名】 ハクレンボク
【生薬名】 シンイ(辛夷=モクレン全般の花)
【科】 モクレン科
学名にある「Magnolia」はモクレン属であることを示しており、モクレン、コブシ、タムシバ、
ホオノキ、オオヤマレンゲなどは皆仲間です。ただ、これらがほとんど中国原産であるのに対し、タイサンボク(泰山木、大山木とも綴る)は北米南部原産で、明治12年にアメリカのグラント将軍(のち大統領)来日の際、上野公園にハナミズキを記念樹として植え、夫人がタイサンボクを植えました。これが日本で最初のタイサンボクとなりました。
当時はこれを受けて「グラントギョクラン(玉蘭)」とも呼ばれ、そのほか、トキワギョクラン(常磐玉蘭)とも呼ばれていました。いずれにしても、威風堂々としたスケールの大きいこの木の体をよく表したネーミングですね。ちなみに学名の 「grandiflora」も「大きい花」を意味します。
モクレン科の花の蕾を乾燥させたものを生薬では「辛夷」といいますが、このタイサンボクの花に
も同様の薬効があるようです。鼻詰まり、花粉症、頭痛を癒す。高血圧には葉を煎じたものを服用するとよいと言われています。
鎌倉の若宮大路の一本東寄りの道は、「辻説法通り」と呼ばれています。今の安国論寺のあたりに安房(千葉)から移り居を構えた日蓮上人が、このあたりによく現れ人々に説法をしたことがその名の由来です。現在は「日蓮上人辻説法跡」として石碑が建っています。
そこに、見事なタイサンボクの木があるので、7月に撮影しました。
ちょうど日蓮さんの碑の修繕工事中で、タイサンボクも剪定されていたので「くださーいっ!」と叫んで頃合いのよい枝葉を少しもらって染めてみました。花は残念ながら切られた中にはありませんでした。
タイサンボクはその優雅な香りが有名ですが、大木が多くて、花が高いところにつくので香りを直接嗅げる機会が少ないです・・・。煎じたときの香りは花の甘い香りと違い、染場には眠気の醒めるような"辛口"の芳香が広がって、気分すっきり。煎液も濃くしっかりしていて、鉄媒染で存在感のある銀鼠色が染まりました。
一度みたら忘れられないその花の"華"のまさに濃い"影"の色でした。
イギリスのいくつかの州では、花をピクルスにする風習があり、また薬味として料理に使うことがあるのだそうです。また、アメリカ南部を象徴する花であり、ミズーリ、ミシシッピ両州の州の花でもあります。
花言葉は、「威厳をつける」「自然の愛情」「華麗」「壮大」。
【参考サイト/文献】
・http://www.hana300.com/
・http://www.e-yakusou.com/
・http://had0.big.ous.ac.jp/index.html
・http://ja.wikipedia.org/wiki/タイサンボク
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink/
・ http://newpfaf.webhost4life.com/user/default.aspx
・http://biwa28.lolipop.jp/
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「新和英中辞典」 研究社
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