クロガネモチ・まさかの碧色
【学名】 Ilex rotunda
【英名】 Round Leaf Holly, Kurogane Holly
【別名】 ナノミ、モチノキ、フクラシバ
【生薬名】
【科】 モチノキ科
工房の庭の片隅に、いつからか、見慣れない木がお目見えしました。鳥が種を落としていったようで、気がついたときにはけっこうな太さの立派な木に。でもこれといった特徴もなく、「ネズミモチだな・・・。」と勝手に思い込んでいました。
ある日、庭木の剪定に来ていた庭師O親方が「これはクロガネモチですね。」というのを聞き、「あ、やっぱネズミモチの仲間ね。」と浅はかに早合点。「ま、ちょっとついでに染めてみるか。」ぐらいの気持ちで先日煮出してみたところ・・・アルカリで抽出した訳でもないのに液にぶくぶくと緑色の泡が立っているではありませんか。おかしいなぁ、鍋に薬品でも残っていたのかしら??そして、染め上がった色は、予想だにしていなかった色であった!
クロガネモチさん、ご無礼いたしました。ネズミモチとは全くの他人だったんですね。こちらはモチノキ科。
本州(関東、福井以南)、四国、九州、沖縄などの山野に自生。比較的都市環境にも耐えることから、公園樹、あるいは街路樹として植えられます。「クロガネモチ」が「金持ち」に通じるから縁起木
として庭木として好まれる地域もあるようです。うちのケースのように鳥が種を落として発芽することもよくあるとか。「クロガネ」の名は、葉柄や枝が紫色っぽいところから。材木は農機具の柄としても用いられたりもしたそうです。
「和漢三才図絵」のモチノキ(黐)の項に、(要約)「黐膠(トリモチ)は鳥をさすものである。四、五月に細かい白花を開いて子を結ぶ。子は正円で熟すると紅色。その木皮を剝いでみずに浸し爛らし、これをつき、流水に濾して皮かすを取り去ると、そうめんいとのようになり、大へん粘る。人はこれを用いて鳥雀を粘し、黐膠という。」の記述があり、江戸黐、真黐、黒鉄黐が紹介されている。「黒鉄黐は江戸黐に似ていて葉はやや扁たく 、その子はほとんど輝きがない。」とあります。(うちでは実がついているのはみたことがないですねぇ。)「和漢薬」には「モチノキ科の樹皮中に血圧降下性物質あり。」の記述もみあたります。
生薬としての有効成分は、蝋(ワックス)、トリテルペンアルコールの脂肪酸エステル、ゴム様物質、樹脂質、タンニン。
中国では樹皮や根皮を止血・鎮痛・風邪・扁桃腺炎などに用い、また樹皮は染料として用いてきたといいます。
さて、その驚きの色とは・・・なんと「みどり」! 銅媒染で 浅緑色、鉄媒染で老竹色が染まりました。
クロガネモチさん、今までごめんなさい。見かけで判断しちゃあいけなかった。
ヲンナは「ギャッブ」に弱いのよ。あの地味な容姿でこのお色。イチコロ、もう、あなたゾッコンです。
花言葉は、「魅力」「寛容」。
【参考サイト/文献】
・http://www.e-yakusou.com
・http://had0.big.ous.ac.jp/index.html
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink/
・http://ja.wikipedia.org/wiki/クロガネモチ
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
・「和漢三才図絵」第84巻
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