ユキノシタ・美味しい東雲色(しののめいろ)
【学名】 Saxifraga stolonifera
【英名】 Strowberry Stone-Break、Mother of Thousands, Beefsteak Geranium
【別名】 ミミダレグサ(耳漏草)、トラノミミ(虎の耳)、カンザシバナ(簪花)
【生薬名】 虎耳草
【科】 ユキノシタ科
梅雨が間近になると、鎌倉界隈ではたくさんのユキノシタに白い花がつきます。
学名のSaxifraga(サクシフラガ)は、ラテン語の 「saxum(石)+ frangere(砕く)」
が語源。 尿の結石を溶かす作用がある、とか、 岩石の割れ目に生える、とかの諸説あります。(鎌倉では、たしかに寺社の石垣の隙間に群生しているのを見かけますね。)
stoloniferaは、「走出枝をもつ」の意味で、茎の根元から細い枝状のランナーが伸び、その先に新株ができることに由来しています。 葉はシマシマ、ざらざらとした毛がはえているところが生薬名の由来でしょうね。
和名のユキノシタは、群れて咲く可憐な白い花が雪に例えられ、花の下の葉が、ぼた雪にけぶったように見えることから。さすが、日本の情緒!
それにひきかえ英語名はユニークです。「八百万のおっかさん(Mother of Thousans)?!」(ちょっと日本のユキノシタとは形が違いますけど)、「ビフテキ・ゼラニウム」(!!) 私たちは、葉を天ぷらや酢みそ和えで美味しくいただきますが、あちらも食べるのでしょうか・・・。
鎌倉市の地名の一つ、「雪ノ下」。鎌倉市のHPによれば「鶴岡八幡宮にある古い書物によると、源頼朝の食事に雪を出すため、雪を貯蔵しておく雪屋(ゆきや)を今宮(八幡宮の裏)あたりに保存したためといわれています。また、このあたりは「ゆきのした」という草が多くはえていたからともいわれています。 」とのこと。
俳諧では、夏の季語。
「和漢三才図絵」には「虎耳草」の名で、「急性伝染病には葉の汁を酒と一緒に服用するとよい。汁だけ飲むと吐き気を催すので注意。耳垂れには汁を耳にたらすとよい。子供の引きつけにも効果あり。」などの記述が見当たります。
実際、民間薬として長く親しまれていますね。
おできの吸い出しには、蒸し焼き、またはあぶった葉を貼る、切り傷、やけどには汁を塗布。またカリウムを豊富に含むので、煎じて服用すると、動脈硬化の予防に効果があるといわれます。
煮出した液は深々とした黒っぽい色になるか?と思いましたが、予想に反し、ビワに近い赤茶となり、アルミで東雲色 (しののめいろ)、銅で赤茶、鉄で黄枯茶色(きがらちゃいろ)を得ました。
花言葉は、「愛情」「好感」「軽口」「無駄」「切実な愛」「片意地」。
【参考サイト/資料】
・http://had0.big.ous.ac.jp/index.html
・http://www.e-yakusou.com/
・http://www.hana300.com/
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink
・http://www.city.kamakura.kanagawa.jp/kids/jh/kjh221.html
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「和漢三才図絵」98の巻
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
・「よくわかる山菜大図鑑」今井國勝・今井万岐子/著 永岡書店
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載
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