クズ・強いヲンナの若菜色
【学名】 Pueraria lobata(Willd.) Ohwi, Pueraria Thunbergiana Benth
【英名】 Kudzu, Japanese arrowroot
【別名】 クズカズラ、マクズ,ウラミグサ(裏見草)
【生薬名】 カッコン(葛根=根),カッカ(葛花=花)
【科】 マメ科
あちらの架線際、こちらの崖・・・ただいま鎌倉でもクズの葉がわさわさと旺盛に繁殖しています。
英語名"Kudzu"からもわかる通り、日本古来の植物。インドネシアや台湾などにも自生しています。鎌倉にも線路沿い、崖沿いなどに繁殖しており、里山はこのクズのツルに木々が絡めとられいるのがよく見られます。(里山保全のためにはツルは取ってやるのがよいのですが・・・。)
別名の裏見草(うらみぐさ)は 葉が風にひるがえると裏の白さが目立つことから。平安時代には「裏見」を 「恨み」に掛けた和歌も多く詠まれたそうです。
「秋風の吹きうらがへす葛の葉のうらみてもなほうらめしきかな」(古今集・平貞文)・・・秋風が吹き裏を見せる葛の葉のごとく、私に飽きて去って行ったあの人は恨んでもなお恨みきれない・・・確かにクズには、優美な曲線をたたえた外見とは裏腹に、どこででもたくましく生きていかれる自立した女性のイメージがありませんか? 未練がましい男に用はないのダ。
日本では、根を薬に用いてきただけでなく、ツルで籠を編み(「つづら」は「葛籠」と書きます。)、ツルの繊維をとって糸とし葛布を織るなど、生活に密着した植物でした。
近年では、開拓した土地の土肌を緑化する目的で、アメリカなどに輸出されているのですが、これがたいそう強いため、アメリカの在来種を駆逐してしまっている、という問題も起きています。たいていの場合、日本の在来種は外敵に弱いのですが、これは数少ない逆の例といえるでしょう。なんと、その繁殖力の旺盛さから「世界の侵略的外来種ワースト100」 (IUCN, 2000) 選定種の一つに挙げられているのです! すいません、と言いつつ、私は密かに「ざまあごらんあそばせ」なんて思っちゃってるのです・・・ゆけ、なでしこジャパン。
染色には葉を用います。できれば花が咲く前に採取し、アルカリで抽出することで、美しい緑色を得ることが出来ます。一番液にはアクがでるので、色を鮮明にするときは2番液から使用した方がよいでしょう。
根を秋から春にかけて掘り、十分に水洗いして、乾燥しやすいように外側の皮を取り除き、板状あるいはサイコロ状に切ってから天日で乾燥させます。これを生薬名で葛根(かっこん)といい、煎じて服用することで血糖降下、発汗解熱効果が期待できます。これを主成分とした「葛根湯」は風邪の初期症状の緩和などに用いられます。
花は、9月の開花の始まる頃採取し、風通しのよい場所で速やかに乾燥させます。 昔から「酒毒を消す」といわれ、二日酔いに効くとされます。また、近年、女性ホルモンと同様の働きがあることがわかったり、血糖値を下げたり、脂質の代謝を高める働きがあることがわかってきたりして、注目の植物です。
梨木香歩さんのからくりからくさ という本には、クズのお花でジャムを作るお話がでてきます。
秋の七草のひとつ。花言葉は「治療」「芯の強さ」「恋の溜息 」。 9/13・9/21の誕生花。 古典落語に「葛根湯医者(かっこんとういしゃ)」。
もう何度も染めていますが、先週、近くの野原で採取したものをアルミ媒染で染めたところ、柔らかさの中に強さを秘めた、古代色でいう若菜色(わかないろ)が染まりました。見ていると、雑念が消え、目の前に道がすうっと現れるような、そんな色です。
【参考文献/サイト】
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
・「続々・草木染め 染料植物図鑑」 山崎青樹/ 著 美術出版社
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「よくわかる山菜大図鑑」今井國勝・今井万岐子/著 永岡書店
・http://had0.big.ous.ac.jp/index.html
・http://www.e-yakusou.com/
・http://ja.wikipedia.org/wiki/クズ
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink/botan/flower2/flowers.htm
・http://www.h-and-b-labo.com/05/index.html
・http://www.wpro.who.int/internet/files/pub/97/237.pdf
・http://www.kuzufu.jp/distance.html
・http://d.hatena.ne.jp/amanokakeru/20070917
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