ホンダワラ・磯の香りは海松色を届ける
【学名】 Sargassum fulvellum
【別名】 莫告喪/莫鳴菜(なのりそ)、神馬藻(じんばそう)
【科】 ホンダワラ科
学名のSargassumは、スペイン語で「浮きのある海草」を表すsargazoが語源です。
近年、バイオエタノールをこのホンダワラで作る計画が注目されているとか。
ほとんど食用にならないホンダワラを用いることで現在バイオエタノールの原料にされている穀物を食用として確保でき、価格の高騰が押さえられると期待されています。
鎌倉の材木座、由比ケ浜の海岸には、風の強かった日の翌日などに、根がはずれてしまったホンダワラがたくさん打ち上げられているのを見ることができますね。
大船の農家の友人がこのホンダワラを発酵させて有機肥料を作っていると聞き、大量に採取して届けたことがありましたが、その発酵した液体が実に黒々とした色だったのを思い出し、「これはいけるかもしれない!」と思い、煮出してみることにしました。
思った通り、たいへん濃い染液が得られ、どの媒染も美しく堅牢な茶色から焦げ茶が得られました。銅媒染で得られた緑味の茶、いわゆる海松色(みるいろ)が特に美しいです。
工房中が磯のにおいに満たされただけでなく、しばらくは染めたものにその”かおり”が残るのを「難」とするか、「愛おしい」と思うかは人によるところでしょう。
名前の「ホンダワラ」は「穂俵(ほだわら)」からきており、これは、吉を呼ぶとされる正月の飾り「蓬莱飾り」のアイテムの一つで、冬に採取して乾燥させたホンダワラの葉部分を、一握りずつ折り曲げ、ワラでくくって米俵の形にしたものを用いたことによります。
そう言えば、父が生前西御門の自治会長をしていて、町内の神社のお祭りの準備をしたのを手伝ったことがあるのですが、神社の石の鳥居にその日の朝採ってきたホンダワラをかけて、清めとしていたのを思い出しました。
【蓬莱飾り(ほうらいかざり)】三方に米を盛り、炭、昆布・熨斗鮑・串柿・橙、馬尾藻(ほんだわら)・伊勢海老を、勝栗・結び昆布・梅・数の子・鯛・めざし・裏白・譲葉・橘などを飾る。江戸時代は「食い積み」とも言われた。
【参考サイト/文献】
・http://ja.wikipedia.org/wiki/ホンダワラ
・http://www.weblio.jp/content/蓬莱
・http://kameno.bne.jp/blog/archives/001091.html
・http://www.cafeblo.com/sado/archive-200801.html
・http://www2u.biglobe.ne.jp/%257egln/15/1517.htm
・「和漢三才図絵」
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