ナズナ・いじらしい鶸茶色
【学名】 Capsella bursa-pastoris Medicus
【英語名】 shepherd's purse, mother’s heart
【別名】 ペンペングサ、シャミセングサ(三味線草)、ゴショウグサ(護生草)
【生薬名】 セイサイ(薺菜)
【科】 アブラナ科
世界各地の温帯から暖帯に広く分布。
学名のCapsellaは「小箱」(英語のカプセルの語源)の意味、bursa-pastoris は「羊飼いの財布」の意味で、これがそのまま英語名なりました。mother’sheartとともにいずれも実の形から連想された名前ですね。
ナズナは「撫菜(なでな)」(撫でたいほど愛らしい?!)が転じた、また、夏には枯れることから「夏無(なつな)」が転じた、切り刻むという意味の「ナズ」に、菜がついて、ナズナになったという説などがあります。茎を両手でこすり合わせるように回すと実がぶつかり合って「ペンペン」という音がすること、実の形が三味線のバチに似ていることがそれぞれの別名の語源です。
春の七草のひとつに数えられるほどに親しみのある草で、冬場の貴重な山菜として食用にしてきました。冬至のころに若芽が出始め、ロゼッタ状で冬を越し、早春に白い花を咲かせます。草花の少ないこの時期の野にあって、その花がひときわ可憐に見えるからでしょうか、俳句では新年の季語になっています。
和漢三才図絵には茎を燃やして蚊や蛾をよける、花をゴザの下に敷くと虫がこない、燃やした灰が赤痢によく効くなどの記述があります。4月8日の花祭り(お釈迦様の誕生日)には、ちょうど虫の出始めの季節ということもあり、行灯の上にナズナを吊って虫除けのおまじないにするという風習もあるそうです。
薺菜の名で生薬としても知られており、4~5月ごろ、未熟果がついたまま地上部の全草を採取して、風通しのよい場所で陰干しにして乾燥させます。これをお茶にして常用すると、高血圧、解熱、利尿、便秘、肝臓病、吐血、血便、血尿、生理不順、下痢に効果あり。貧血にもよいそうです。
春の七草に迎えられ、高い薬効もあり、撫でたいほどかわいいとまで思われていながら、俗に「ペンペングサが生える」といえば「貧乏臭い」の比喩。かなり理不尽な扱いのような気がしますが・・・。
それでも花言葉が「全てを君に捧げる 」というのだから、いじらしいったらない、うっ。
アルミでやさしい若菜色、銅で青丹色(あおにいろ)、鉄でぐっとヲトナな鶸茶色(ひわちゃいろ)になりました。
【参考サイト/文献】
・http://www.hana300.com/
・http://www.e-yakusou.com/
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink
・http://ejje.weblio.jp/
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
・「続々・草木染め 染料植物図鑑」 山崎青樹/ 著 美術出版社
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館
・「よくわかる山菜大図鑑」今井國勝・今井万岐子/著 永岡書店
・「和漢三才図絵」 第102巻 /寺島良安
| 固定リンク | 0
「鎌倉染色彩時記(染)」カテゴリの記事
- ワルナスビ・悪ぶっても優男(2023.10.08)
- アレチヌスビトハギ・怪盗ルパンの鴇浅葱(2023.09.24)
- ウメノキゴケ・権力者の赤紫(2023.08.21)
- コマツヨイグサ・風呂上がりの黒緑(2023.08.18)
- カニクサ・蟹もびっくりの草色(2023.08.15)
コメント