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2013/05/13

カワズザクラ・恥じらいの金糸雀色(かなりやいろ)

Kawazu

【学名】  Cerasus lannesiana Carrière, 1872 'Kawazu-zakura'
【英語名】 Japanese cherry
【生薬名】 桜皮(おうひ・樹皮
【科】     バラ科

日本の桜は伊勢の朝熊神社の桜が発祥とされています。
日本の桜前線の基準となり、もっとも愛されているソメイヨシノ(染井吉野)は、実は歴史が意外と新しく、オオシマザクラ(大島桜・ P. lannesiana var. speciosa)とエドヒガンザクラ(江戸彼岸桜・P. pendula Maxim.f. ascendens Ohwi)の交雑種で、江戸時代末期に染井村(東京都豊島区駒込付近)の植木職人がつくりだしたブランドものの 新品種。そのため、種子で増えることができません。現在日本全国にあるソメイヨシノは接ぎ木などで増えた”クローン”であるため、病気や害虫に弱いという弱点があります。
最初の頃は吉野桜と呼ばれていましたが、吉野山の山桜との混同をさけるために藤野寄命博士が染井吉野と命名し、現在に至っています。

一方、カワズザクラは、オオシマザクラとカンヒザクラ (Cerasus campanulata (Maxim.) A.N. Vassiljeva, 1957 )の自然交雑種であると推定されています。
1955年に飯田勝美が静岡県賀茂郡河津町田中で原木を偶然発見したことが名前の由来です。
当初、発見者の飯田氏の屋号から「小峰桜」と地元で言われてきましたが、その後の学術調査で新種と判明し、1974年に「カワヅザクラ(河津桜)」と命名され、1975年に河津町の木に指定されました。現在も原木はこの地に存在し、2007年現在で樹齢50~60年であるといわれています。また、1968年頃からこのサクラが増殖されるようになって、全国にひろがりました。

鎌倉宮の鳥居脇には2本のカワズザクラが鎌倉にいちばんの春を告げるように2月に開花します。花の色がソメイヨシノより濃く、花が全て下を向いて咲く様子が、恥ずかしそうな風情で何ともかわいらしいです。

自生する山桜などの樹皮とおなじく生薬としても用いられます。煎じた液を服用すれば咳止めに、おできや湿疹には直接塗るとよいそうです。
入浴剤として用いれば、あせもなどに効果。また、樹皮は伝統工芸品にも使われるが最近、その乱獲が問題になっています。残念です・・・。

折々に、静岡の河津町に住む友人が、剪定したカワズザクラの枝を送ってくれます。サクラはちょっとした気候の変化などで色が転びやすく、染めるたびに違う色が楽しめるのですが、今年はアルミで優しい金糸雀色(かなりやいろ)になりました。

煮出すと、「桜餅」の香りが漂うのがサクラの罪なところ。赤味を強くするには染液を一晩寝かせるとよいです。

「世の中にたえて桜のなかりせば、春の心はのどけからまし」と在原業平は詠んだが、咲くまでそわそわ、咲いたら散るのが心配でそわそわ・・・まこと日本人の心を乱す花であります。

サクラ全般の花言葉は、「優れた美人」 4/1の誕生花。

【参考サイト/文献】
http://www.e-yakusou.com/
http://ja.wikipedia.org/wiki/エドヒガン
http://ja.wikipedia.org/wiki/ソメイヨシノ
http://ja.wikipedia.org/wiki/カワヅザクラ
http://www.hana300.com/
http://members.jcom.home.ne.jp/tink
・「和漢三才図会」 第87巻
・「草木染め 染料植物図鑑」 山崎青樹/ 著 美術出版社 
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

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