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2013/07/12

モクレン・自戒の木蘭色(もくらんじき)

Mokuren01

【学名】  Magnolia liliiflora Desr.
【英語名】 Mulan magnolia,Tulip magnolia,Lily magnolia
【生薬名】 辛夷(しんい)
【科】     モクレン科

中国の湖北省付近の原産、もともとは薬用として日本に持ち込まれました。
現在では日本各地で庭木、公園樹などとしてよく栽培されています。
「木蓮」は、花が蓮に似ていることから。地球上で最古の花木 といわれており、1億年以上も前からすでに今のような姿であったといいます。

香水の材料としても使われ、アロマオイルとしても人気、ということですが、日本では花が咲いているときにさして香るという印象はありませんね。気になったので、アロマオイルを買ってみました。大変華やかな甘い香りで、そう、同じ仲間のタイサンボク(マグノリア)の香りです。
欧米では椿(つばき)類、躑躅(つつじ)類とともに3大花木とされているとか。北朝鮮の国花でもあります。一回り花の小さいコブシは日本原産です。

江戸時代の百科事典「和漢三才図絵」には、「木蘭」の名ででてきます。「深山に生えるものが大へん大きくて舟に作ることができる。・・・(中略)梓人(はんほり=印判をつくる人)の珍重するものである。皮を取り去っても枯れない」などの記述がありますが、舟がつくれるような大きさのモクレンって?! 江戸時代の森にははえていたのでしょうか・・・。

花の咲く前2~3月頃に蕾(つぼみ)を採取して日干しにしたものが生薬名で辛夷(しんい)と呼ばれ、蓄膿症や頭痛に効く薬として知られています。
ヨーロッパではやはり花やつぼみを生のまま、または乾燥させて、鎮痛、解熱副鼻腔炎の消炎などに用います。

さて、インドの初期の仏教の伝統的法衣の色に「三種の壊色(えじき)」というのがありまして、青・黄・赤・白・黒の五正色およびそれぞれの中間色のようなはっきりした色を袈裟に使うことを禁じる決まりがあった中、その三色は、
・青壊色(あおえじき)・・・酒の瓶上に覆った銅器に生じる錆びの汚れた色
・黒壊色(くろえじき)・・・川底の土のような緇泥。錫の錆びついた色
・木蘭壊色(もくらんえじき)・・木蘭の樹皮の色で黄みを帯びた褐色
とい三色で、数少ない袈裟として身につけてよい色だったそうです。

飛鳥・天平時代に僧侶の着る衣は、木蘭(もくれん)の樹皮を用いた染めであったといわれ古くから日本に渡来していたことがうかがえます。日本伝統色の色名にも木蘭色 (もくらんじき)というのがあり、これは黄色味のベージュで、まさにアルミで媒染した色がこれでした。たしかにケレン味ゼロ、欲のない色と申せましょう。(笑)

工房の近くのお宅に見事なモクレンがあり、花が終わった後にワッサリと生えてきた葉と枝をいただいて染めてみました。アルミで木蘭色、銅で璃寛茶(りかんちゃ)、鉄で美しい緑味の黒。

俳諧では、「白木蓮」「更紗(さらさ)木蓮」などとともに春の季語。

花言葉は「恩恵」「自然愛」
1/8・7/4の誕生花。

【参考サイト/文献】

http://members.jcom.home.ne.jp/tink
http://www.hana300.com/
http://www.e-yakusou.com/
https://ja.wikipedia.org/wiki/モクレン
http://www.pfaf.org/
http://www5e.biglobe.ne.jp/~e-kaori/houi/houinoirotop.htm
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「季節の野草・山草図鑑」高村忠彦/監修  日本文芸社
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第82巻
・「続・草木染め 染料植物図鑑」 山崎青樹/ 著 美術出版社

(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房  禁転載

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