ソテツ・意地でも染まるか、の枯野色
【学名】 Cycas revoluta Thunb
【英名】 Fern Palm, Japanese sago palm
【別名】 テッショウ(鉄蕉)、ホウビショウ(鳳尾蕉)≒ナツメヤシ、シャメンカ(赦免花)
【生薬名】 ソテツジツ(蘇鉄実=実)
【科】 ソテツ科
「和漢三才図絵」によると、中国で「鉄樹」と呼ばれていたこの木は、琉球から薩摩に入って来たといいます。これを植えると火事を防ぐことができると言われ、庭木として人気がでました。
久米島産のものが葉が小さくて一級品とされ、大島、八重山諸島のものは葉が大きく二級品扱いだったとか。枯れそうになったら、鉄くずを肥料としてやったり、根元に鉄くぎを打つと元気になると言われていて、和名の「蘇鉄」はここからきています。(鉄で蘇る!)
奄美大島の大島紬は、シャリンバイで染めた糸を田んぼの泥につけて媒染し、あの独特の黒茶を得ますが、これは泥に多くの鉄が含まれていて鉄媒染の効果があるため。
奄美で大島紬を学んでいた友人の話では、田んぼ(米を作る田ではなく、今では染め専用の泥田)には、その鉄量を維持するために、時々ソテツの葉を切って入れているそうです。
ケガをするかと思うほどの硬い葉は「こまかにならんで、魚のエラのようである」(和漢三才図絵)。
雄雌異株で、花は夏。雄花は、マツカサのような円柱花序、雌花は茎のてっぺんに丸くまとまり、上部に黄褐色の宝塚レビューのフィナーレの背飾りのようなモサモサした毛が生えます。
その中に抱かれるように鮮やかな朱色のクルミ大の実がつきます。なかなかの迫力です。
この実を10~11月頃に採取して、風通しのよい場所に陰干しして乾燥さたものを生薬(しょうやく)で、蘇鉄実(そてつじつ)といいます。有効成分としては、たんぱく質、脂肪、リンゴ酸、コリン、アデニン(鎮咳作用)、ホルムアルデヒド(殺菌作用)を含有。通経、咳止め、胃痛などに効果ありとされています。
中国では、胃痛にソテツの葉15グラムを適量の水で煎じて服用。 また、肺がんの治療には、ソテツの葉250グラムとナツメ10個をよく煮て、ナツメを食べてから、煎じ液を服用するそうです。
そのほかには、胃がん、肝がんの治療にも、蘇鉄実(そてつじつ)が他の生薬と配合して用いられているそうです。
近年、抗がん作用のある成分が非常に多く含まれていることが、薬理実験により証明されているといいますが、一方で文献には発がん性物質あり、の記述も見あたります。
古来、不老長寿の効あり、とも言われたのはその豊富なでんぷん質のせいかと思われます。沖縄では食料事情の悪いときにこのソテツの実から澱粉を取って足しにしていたといいますが、水さらしが十分でないと、中毒症状を起こすこともしばしばで、これを「ソテツ地獄」と呼んだそうです。
緑深い、鎌倉市常盤のYさんのお宅にある、大きなソテツの木から葉をたくさんいただきました。
煮出していると、トウモロコシやそら豆を煮ている時のようなにおいがします。
あの、黒々とした葉の風情から、さぞや濃厚な染液が出るに違いないと思いきや、普通の水ではなかなか色が出ません。「意地でも(色は)出すかい!」と挑まれているようでしたね。(笑)
敵がそう来るならと、アルカリ水で煮出したところ、やっとうすい黄色の液となりました。なんとなく白濁としてトロミがあったのは、多く含まれるというでんぷん質のせいでしょうか。
結局、努力の甲斐なくソテツの意地に負け、どの媒染でもあっさり色。鉄で媒染しても明るい飴色や枯野色とは、ある意味、お見事です。
日本三大蘇鉄といわれる三つは以下の通り。
1.能満寺(静岡県榛原郡吉田町)の蘇鉄
2.妙国寺(大阪府堺市材木町)の蘇鉄
3.龍華寺(りゅうげじ)(静岡県清水市村松)の蘇鉄
花言葉は「雄々しい」。
参考サイト/文献
・http://www.hana300.com/
・http://www.e-yakusou.com/
・http://ja.wikipedia.org/wiki/ソテツ
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink/
・http://ejje.weblio.jp/
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第88巻
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版1」 北隆館
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
(C) Tanaka Makiko たなか牧子造形工房 禁転載
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