カラタチ・怖いトゲからまろい黄色
【学名】 Poncirus trifoliata
【英名】 orange jasmine, trifoliate orange
【別名】 枳殻(きこく)
【生薬名】 枳実(きじつ) /枳殻(きこく) =実、枳茹(きじょ)=樹皮
【科】 ミカン科
中国原産。和名は唐橘(カラタチバナ)の略で、「中国から渡来した橘」の意。学名のPoncirus(ポンシラス)は、フランス語のponcire(ミカンの一種の名前)」が語源。trifoliataは「三つ葉」の意味。葉が3枚にわかれることから。4月頃、五弁の白い花を咲かせ、秋に実をつけます。今、工房の隣の垣根にかわいい実がたくさんなっています。かなりの年月を経なければ実のつく木にならないといいますから、この垣根は相当古いということでしょう。
山田耕筰の曲にのせて歌われる北原白秋の「からたちの花」ではカラタチの実を「まろい金の玉」と表していますが、確かにつるりとした金色の実が目を引きます。
たいへんよい香りがしますが、硬く、苦いので食べられません。でも果実酒にはできるそうですよ。苗木はミカン類の接木(つぎき)の台木として用いられます。
和漢三才図絵には「わが国でも蜜柑を奥州で植えると変じて枳殻(=カラタチ)となる。ひとつの不思議である。」という面白い記述が見当たるのですが、はてさて、今日でもミカンを東北に植えてカラタチに変じるという事はあるのでしょうか・・・?!
秋にまだ黄色く熟していない果実を採集して、輪切りにして陰干しにして乾燥する、これを生薬(しょうやく)で、枳実、黄色く熟した果実を輪切りにして乾燥したものは枳殻(きこく)と呼ばれます。これを煎じて服用すれば健胃、利尿、去痰などに効果。慢性関節リュウマチ、椎間板ヘルニア、五十肩、痛風、腰痛、打撲、発汗、冷え性などには、乾燥した果実、葉茎か生の果実、葉茎を刻み、布の袋で煮出してから、そのまま風呂に入れて浴湯料にするとよいそうです。 カラタチのさわやかな芳香が、体を温め血液の循環を促進する効果があるとか。
ひび、あかぎれ、抜け毛などの化粧水として、枳実(きじつ)や枳殻(きこく)を細かく刻み、エチルアルコールに浸けて、1週間ほど数回振って攪拌してろ過したものにリスリンと水をくわえて使います 。しもやけ(凍痩)には、熱いお湯に患部を数分間浸してから、熟した実や生葉の汁を塗布してマッサージするとよいそうです。カラタチ、なかなかのお役立ちアイテム!
昔はその鋭い棘状の枝が泥棒よけの役目を果たすこともあり、垣根によく使われました。動物の侵入を防ぐ目的で畑の周辺などにもよく見られたといいます。工房の隣の家は今では数少ないこのカラタチの垣根で、剪定の折りに枝を貰い受け染めてみたところ,ミカン科らしいやさしい黄色から青丹(あおに)色を得ました。煮出すと柑橘系のさわやかな香りが立ち上ります。でも、この鋭い棘状の枝にはいささか手こずりました・・・。
俳諧では、花は枸橘(くきつ)の名で春の季語、実は枳殻(きこく)の名で秋の季語。
花言葉は「思い出」。
参考サイト/文献
・http://www.e-yakusou.com/
・http://had0.big.ous.ac.jp/
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink
・http://www.hana300.com/
・http://ejje.weblio.jp/
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第84巻
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
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