ミツマタ・お金を支える璃寛茶(りかんちゃ)色
【学名】 Edgeworthia chrysantha Lindl.
【英名】 Oriental paperbush, Mitsumata
【別名】 ムスビギ、ミマタヤナギ、サキクサ(三枝)=古語
【生薬名】 新蒙花(しんもうか)/蒙花株(もうかじゅ)
【科】 ジンチョウゲ科
原産地は中国中南部、ヒマラヤ地方。江戸時代初期に渡来しました。
となると、
春されば/まず三枝(さきくさ)の/幸(さき)くあらば
後(のち)にも逢はむ/な恋(こ)ひそ/吾妹(わぎも)
-柿本人麻呂
の歌の三枝はジンチョウゲ科の別の植物ということになるようです。ミツマタの名のとおり、枝がきれいに三角に生えています。
紙すきに用いられるようになったのは江戸時代前期ごろからといわれ、徳川家康が伊豆でミツマタの紙すきをすすめたとされますが、和漢三才図絵には「杖椏(きのまた)はみな三叉で葉は水柳(かわやなぎ)に似ている。小黄花を開き房になる。」という簡単な紹介があるだけで、紙に漉くなどの記述はありません。
シワになりにくく、丈夫で虫に食われにくいことから、明治9年に政府がミツマタで紙幣を作って以来、現在まで紙幣や証紙など重要な書類の紙に使われています。
開花期の花蕾を採取して乾燥させたものを生薬で新蒙花(しんもうか)、蒙花株(もうかじゅ)といいます。根も薬用に用います。
煎じて服用すると、解熱(げねつ)、消炎、眼病薬として緑内障、鳥目(とりめ)などに効能。
北鎌倉の浄智寺に4月にお邪魔した際、染めてみたくて、花の終わった剪定の枝を少し分けていただいたことがあります。
アルミで、その花の色を移したようなやさしい淡黄色を得ました。
銅の梅幸茶 (ばいこうちゃ)色、鉄の璃寛茶 (りかんちゃ)色も美しく、紙に漉いたときに現れる「強さ」が感じられます。
俳句では、花は春の季語、「三椏の皮剥ぐ」「三椏蒸す」は冬の季語。
花言葉は「意外な思い」「強靭」。
参考サイト/文献
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink
・http://www.hana300.com/
・http://kawasakimidori.main.jp/
・http://www.e-yakusou.com/
・「樹木大図説」 上原 敬二 / 著 有明書房
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 2」 北隆館
・「季節の野草・山草図鑑」高村忠彦/監修 日本文芸社
・「和漢三才図絵」/寺島良安 第84巻
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