マテバシイ・ポジティブ・ブラック
【学名】 Lithocarpus edulis Nakai
【英名】 Matebashii Tree
【別名】 マタジイ、サツマジイ、アオジイ、トウジイ
【科】 ブナ科
日本原産。「馬刀葉椎」、「全手葉椎」の字をあてます。関東より南にひろく分布します。古来、九州、沖縄、また、八丈島などでは樹皮を用いて黒を染めました。
学名の「edulis」はラテン語で「食べられる」の意味。実際、マテバシイのドングリは、ほかのドングリに比べて渋みが少なく食用となります。皮が割れるまで煎る、ゆでる、ご飯に炊き込むなどの方法で楽しめます。縄文人は常食していたといいますね。(ちなみにトングリを食べているため味が良いとされるイベリコ豚が食べているのは、ヒイラギガシとコルクガシの実らしいです。)
「杼」とい漢字があります。これは「ひ」と読み、織物の緯糸をおさめ、経糸の間を飛ばす道具の名前ですが、この字は、なんと「どんぐり」とも読むんです! うーん、どうしてでしょう。ドングリの木で杼がつくられていたのでしょうか・・・?
韓国では豆腐やこんにゃくをつくる食材として「どんぐり粉」が一般的に売られています。ドングリ豆腐、美味しいですよね。ドングリ団子は自分でも作れます。
【ドングリ団子】
・マテバシイ100個くらい
・白玉粉1/2カップ。
[作り方]
・まず、マテバシイの殻をむいて薄皮をとり、砕く。
・お湯を変えながら、15分くらいゆでる。
・すり鉢ですりつぶす。
・白玉粉を水で、耳たぶくらいの柔らかさに練る。
・どんぐりに混ぜて、小さく丸める。
・15分くらい蒸して、出来あがり。
江戸時代の百科事典「和漢三才図絵」には「椎」について、「堅そうにみえるが虫がくい易く、屋柱にはできない。ただほそ長い木を椽(たるき)の用材にするだけである。椎の木の皮は魚網を染めるのに用いる。」と記述があります。
工房からすぐの朝比奈峠をこえたその麓の、金沢区の関東学院大学の敷地に、よく晩秋にマテバシイのドングリを拾いに行きます。ドングリ拾いはハマります!「染料集め」という使命もどこへやら、誰かにとめてもらうまで、夢中になって拾ってしまいます! 宝物を見つけたようなワクワク感がとまりません!(笑)
シイやカシの林というのは、差す光が柔かで、心がほっこりしてきます。針葉樹の森が「陰」であれば、こちらは「陽」。深呼吸すると気持ちもなんだかポジティブになってきます。本来、太古の日本の国土の多くを覆っていたのは、このような照葉樹たち。その恵みは長く日本人の衣食住を支え、そして気質や文化を育みました。高度成長期に経済優先でスギを多く植林してから、日本人はなんだか「からっと」しなくなったと、私は勝手に思っています。そう、人の気質というのは、植生に左右されると思うのです。陰の森も心が落ち着きますが、照葉樹の森にある、あの「前向きでほっこりした」空気感も大切にしたいです。
染色で実を用いる場合、同じ重量であれば実よりはかま(殻斗=かくと)の方が濃く染まります。
くつくつ煮て、一晩置くと、染液は美しい赤茶色に。アルミや銅で染液のその赤がかなり移り、美しい土器色(かわらけいろ)や団十郎茶に。でも特筆すべきは、鉄媒染の黒。透明感と力強さが同居する、元気な黒です。
花言葉は「勇気」「力」「長寿」。シイ全般の花言葉は「古風」
参考文献/サイト
・「続・草木染め 染料植物図鑑」 山崎青樹/ 著 美術出版社
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店
・「よくわかる山菜大図鑑」今井國勝・今井万岐子/著 永岡書店
・「原色牧野日本植物図鑑 コンパクト版 1」 北隆館
・「和漢三才図絵」/寺島良安
・http://www.hana300.com/
・http://pcweb.hobby-web.net/7106/060703.html
・http://ja.wikipedia.org/wiki/マテバシイ
・http://www.e-yakusou.com/
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink
・http://www001.upp.so-net.ne.jp/donguri/html/ryouri.htm
| 固定リンク | 0
「鎌倉染色彩時記(染)」カテゴリの記事
- コチニール・南米の真紅(2024.09.17)
- ナガエコミカンソウ・隠しきれない憲法黒茶(2024.09.16)
- トウヘンボク・変わり者は輝く褐色(2024.09.16)
- カタヒバ ・木に憧れて、梅幸茶(2024.09.15)
- ナツメ・馬も驚く柿茶色(2024.09.13)
コメント