« オシロイバナ・化粧際立つ黒緑 | トップページ | ヒガンバナ・あの世から白茶色 »

2013/12/22

アオキ・霊験あらたかの涅色(くりいろ)

Aoki02

【学名】   Aucuba japonica
【英名】   Japanese Laurel
【別名】   アオキバ
【科】    ミズキ科、(アオキ科)

 

カジュの建物の東側には、黒々と繁るアオキが何株もあります。師走を迎える頃にピーナツ大の実が赤く色付くのを見るのがとても楽しみです。
日本原産の常緑広葉木。雌雄異株。
幹が蒼い(濃緑色)ことからこの名となりました。
学名の「Aucuba」はアオキの別名アオキバが転じたものです。

昔から民間ではできものの吸い出し、しもやけ、やけどなどに、新鮮な葉を弱火であぶり、揉んだ柔らかくしたものを患部に貼るという方法が長く伝承されてきました。なんでも、近年、化学的にその抗炎症作用が動物実験で証明されたそうです。

胃腸薬として古くから知られる「陀羅尼助」(だらにすけ)は、キハダ(黄檗)の樹皮とアオキの葉を煎じた薬で、修験道の開祖といわれる役行者(えんのぎょうじゃ)が、1300年前に當麻寺(たいまでら・奈良県 葛城市)に伝えた伝統薬です。
現在でも、當麻寺や付近のいくつかの製薬会社ではこの薬を製造販売していますが、現在はアオキは配合されていないそうです。ふーむ、そう言えば、昔、祖母の家の奈良の置き薬の中にこの「陀羅尼助」があったような・・・。

Darani01 Darani02 Darani03

(ちなみに「陀羅尼(だらに)」とは密教の呪文のひとつですが、もともとのサンスクリット語に「記憶して忘れない」という意味があるのだそうです。)

日陰でもよく育つことから、庭木としても人気があり、斑入りなどの品種も多く存在します。夏から秋にかけて赤い実がつき、落ちずに冬を越します。カジュではちょうど12月上旬の冬の展示会の時に実がつくので,玄関の大瓶に投げ入れで活けて、ちょっとしたクリスマス・ムードづくりに一役買ってもらっています。

鎌倉ではうちだけでなく、深い谷戸の崖などにわっさりと自生しているのをよく見かけます。二階堂の鎌倉市立第二小学校の裏のがけにはアオキの”林”がありますよ。

最近になって初めて染めてみました。
枝葉を煮出しはじめてほどなくすると、染液は赤黒い色を呈してきて、あんなに蒼々ていた葉は、なんと、真っ黒に変色してしまいました!(これはアウクビンという成分によるものらしいです。)・・・陀羅尼の呪文のなせる技か・・・。

染め上がった色はそれほど恐ろしげではなく(笑)、渋い枯れ茶色やひき茶色など、見ていると気持ちが落ち着く色あいです。アルミの涅色(くりいろ)が特に美しいです。(涅は川底の土のような色、の意味。緑味の黒を指すこともあります。)

花言葉は、「初志貫徹」「変わらぬ心」「若く美しく」。

http://www.e-yakusou.com/
http://had0.big.ous.ac.jp/index.html
http://www.taimadera.org/
http://members.jcom.home.ne.jp/tink
・「薬草図鑑」伊沢凡人・会田民雄/著 家の光協会
・「生薬101の科学」 清水岑夫/著 講談社
・「よくわかる樹木大図鑑」平野隆久/著 永岡書店

※陀羅尼助の写真 出典
http://store.shopping.yahoo.co.jp/tokutoku-drug/036-4969080000057-.html
http://daranisuke.jp/shop/daranisuke8.html
http://www.jinbendo.jp/shop/products/detail.php?product_id=12

(C) Tanaka Makiko    たなか牧子造形工房  禁転載

| |

« オシロイバナ・化粧際立つ黒緑 | トップページ | ヒガンバナ・あの世から白茶色 »

鎌倉染色彩時記(染)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« オシロイバナ・化粧際立つ黒緑 | トップページ | ヒガンバナ・あの世から白茶色 »