ヒガンバナ・あの世から白茶色
【学名】 Lycoris radiata
【英名】 Spider Lily
【別名】 曼珠沙華(まんじゅしゃげ)、死人花(しにびとばな)、幽霊花(ゆうれいばな)、狐花(きつねばな)、捨子花(すてごばな)、はっかけばばあ
【生薬名】 石蒜(せきさん=鱗茎)
【科】 ヒガンバナ科 (ユリ科)
古代、中国より渡来した史前帰化植物。
現在日本に分布するヒガンバナは種子はつかず、鱗茎で増えます。
たくさんの別名がありますが、どれもあまり縁起の良い感じがしませんが、これは中国で花と葉っぱが別々にでてくる植物が縁起が悪い、と嫌われていて、渡来した際、その風習ごと伝わったためとされています。
でも、別名の「まんじゅしゃげ」はサンスクリット語のma^njusakaからきていて、これには"天上の花"の意味があります。
たしかに、花にはちょっと浮き世ばなれした雰囲気がありますね。この花の周りには、ぽっかりとあの世への入り口が開いているような、この世とあの世の境界線上にゆらゆらしていて、何かの拍子にその境が超せてしまうかも、と思わせ力を持っている気がします。
神社仏閣の多い鎌倉では、その境内に、そして、思わぬ里山の陰に群生を見ることができます。気候の変化や他の植物との「勢力争い」に関わらず、律儀に、ほぼ決まって秋のお彼岸に花を咲かせます。
彼岸の人々がその時期にちゃんと家族のもとに帰ってこられるように、だからこの世の気候の変化なんて取るに足らない事情に左右されず、この世とあの世の境界の扉が開くきめられた時期を告げに、必ず彼岸に咲く使命感をもっているのではないでしょうか・・・。
全草が有毒で、そのためモグラやネズミなどを寄せ付けないために田畑や土葬の多かった墓所によく植えられました。
毒の主成分はアルカロイドで、誤って食すれば激しい嘔吐や神経麻痺を起こすので十分注意のこと。
この毒は、様々に薬に転用されています。
鱗茎を乾燥させたものを生薬で「石蒜(せきさん)」といい、鎮咳去痰や鎮痛、降圧、催吐などの効果があるとされます。
また、ヒガンバナの生の鱗茎をすりおろしたものが肩こり、浮腫、乳腺炎、たむし、あかぎれ、打ち身、捻挫、肋膜炎などの治療に用いる、と文献にはありますが、素人は行なわない方がよいでしょう。
「和漢三才図絵」には、根をすりおろしたものを壁土に混ぜて塗ると、ネズミの来ない家になる、絵の具に混ぜて漆器に絵を描くと剥げない、などの記述があります。
花の終わった晩秋に、残った茎とワッサリ生えてきた葉っぱを煮出してみました。
さぞや毒々しい色が出るかと思いきや、ほとんど染液に色はなく、どの媒染でもやわらかい色になりました。アルミで白茶色、鉄で利休鼠。解脱したような欲のない色合いです。(笑)
話によると、根を用いると赤が出る、とのこと。今度試してみましょう。
花言葉は、「悲しき思い出」「恐怖」「陽気な気分」「再会」
9/20 9/23の誕生花。
◎参考サイト/文献
・http://www.hana300.com/inumak.html
・http://had0.big.ous.ac.jp/index.html
・http://ja.wikipedia.org/wiki/ヒガンバナ
・http://had0.big.ous.ac.jp/
・http://www.e-yakusou.com/
・http://members.jcom.home.ne.jp/tink/botan/flower2/flowers.htm
・「和漢三才図絵」
・「和漢薬」赤松 金芳 / 著医歯薬出版株式会社
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